キャンプ、スポーツ、習いごと。新型コロナで危機に陥る「子どもの体験」を守り抜けるか(夢職人・岩切準)

今井 悠介
スタディ通信編集部(CFC代表理事)

新型コロナウイルス感染症の急速な拡大に伴う一斉休校や外出自粛などにより、多くの子どもたちは今とても苦しい状況にある。

私たちの元にも、子どもたちのストレスや運動不足、学習の遅れ、生活リズムの乱れなど、様々な不安の声が届いているばかりか、既に家庭への経済的な影響も表面化している

今後、貧困の拡大、オンライン教育の普及に伴う通信環境格差の問題等、私たちが向き合っていかなければならない重要な論点もたくさん出てきている。

そんな中、子どもたちの学びに関して、まだ十分に光が当たっていないテーマがある。

それは、子どもたちが文化やスポーツ、体験活動など、オンライン教育だけでは代替できない学びの機会を失っているという問題だ。

今、感染拡大防止のためにスポーツクラブやピアノ教室、キャンプなどのあらゆる活動が自粛され、同時にそのような子どもの教育支援活動に従事する地域のNPOや団体が存続の危機に瀕している。

そこで今回は、15年以上に渡り子どもたちのキャンプ等の体験の場を作り続けてきた岩切準さん(認定NPO法人夢職人・理事長)に、子どもたちや体験活動団体の現状、体験活動の意義について、緊急インタビューを行った。


【岩切準(いわきり じゅん)】1982年東京都生まれ。認定NPO法人「夢職人」理事長。東京の下町・江東区で育ち。専門は、社会心理学(修士)、社会教育、ユースワークなど。大学在学中の2004年に「夢職人」を立ち上げ、2008年にはNPO法人となり、理事長に就任。首都圏を中心に地域社会で子どもや若者の成長を支援する教育事業に取り組んでいる。これまでに複数の教育系NPO法人の役員を務め、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの社外理事も務める。

新型コロナの影響でほぼすべての活動が中止に

――新型コロナウイルスで団体の活動にどんな影響がありましたか?

企画準備を進めていた子ども向けキャンプやイベントがほぼ全て中止になりました。3月は日帰りイベント2つが全て中止、宿泊キャンプは3つ企画して2つが中止。4月からGWにかけて予定していたキャンプ3つも全て中止となりました。

「体験活動」とは、自然体験や生活・文化体験など、実体験を重視した学びの活動を指す。夢職人では、山・海・川でのキャンプ、農業や料理、職業体験など、主に小中学生の子どもたちに対して様々な体験活動の機会を提供している。写真は料理プログラムの様子(写真提供:夢職人)

――仕方がないことですが残念です。お子さんの反応は?

子どもにとってもショックが大きかったようです。3月から一斉休校となり、子どもたちの我慢やストレスがかなり蓄積してきた感じがありました。

子どもたちへ事前にお配りする「キャンプのしおり」があるんです。キャンプのスケジュールとか持ち物とかを書いたものですね。ある子は、このしおりが届いてから毎日見ていたようで、「このキャンプを楽しみにして、休校中もがんばっています」と保護者さんからご連絡をいただいたこともあって。

キャンプ参加者に事前に配られるしおり(写真提供:夢職人)

我々としても直前まで実施できる可能性を模索したのですが、特に3月下旬以降はどうにもならない部分がありましたので、子どもたちには本当に申し訳ないですが中止の判断をしました。

キャンプは継続的に参加してくれる子が多いですね。学校の中に居場所を作りにくい子であったり、家庭にご事情を抱えている子もいます。保護者の側としても、子どもには日常から離れて伸び伸びと過ごせる場に行かせたいという思いはとても強かったんです。

川遊びの様子(写真提供:夢職人)

――イベントやキャンプが全て中止となると経営へのダメージも大きいのでは?

私たち「夢職人」の事業は、ご家庭から参加費をいただいて成り立つ「受益者負担型」のモデルです。イベントやキャンプが中止になれば団体の収入もストップします。外出自粛要請を受けて、4月7日から臨時休業に入っています。

まず私自身の報酬・給与の支給を全額停止しました。従業員については、政府の「雇用調整助成金」などを活用しながら給与を100%補償する対応をしています。人件費の他にも事務所の家賃等の固定費が発生します。

農業体験の様子(写真提供:夢職人)

――政府等からの様々な支援メニューについてはどう考えていますか?

まず、融資については先行き不透明な中で資金を借りるのは無理があります。同じ業界の仲間もみんな同じ反応でしたね。

中小企業等に対する200万円の「持続化給付金」については申請をする予定ですが、首都圏は固定費が高く、200万の給付で何か月耐えられるか。現段階で利用できるものは、雇用調整助成金(休業補償)と持続化給付金くらいですね。

東京都の「感染拡大防止協力金」については、休止や営業時間短縮の要請等を受けた「施設」を運営しているわけではないので、支援は受けられないと思います。

カヌー体験の様子(写真提供:夢職人)

民間の助成金等もチェックしていますが、基本的に事業や支援に対して助成されるものなので、いつどのような形で活動できるか不透明な現在の状況下では、計画通りに実施できない可能性もあり、申請することが難しいです。

うちは積極的に動いてくれるボランティアメンバーが多い組織なので、職員の人数は事業規模に対して少ない方だと思います。年間で延べ6,000人くらいの子どもや親、若者がイベントやキャンプ等に参加しますが、職員は私含めて3人しかいません。

あとは約140人のボランティアが分担しながら進めていく仕組みになっているので、まだ縮小しやすい方だとは思いますが、それでもこの状況で耐えられるのは、他の中小企業と同じく数ヶ月程度と見ています。

――キャンプの連携先団体への影響は?

私たちは首都圏を中心に子どもたちを募集し、北海道や福島、神奈川、長野など全国各地の体験活動を推進する団体と連携し、自然体験や生活・文化体験など、実体験を重視した学びの機会を提供しています。

農業体験の様子(写真提供:夢職人)

こうした地方の連携先団体は、1年中子どもの受け入れだけをやっているわけではありません。普段は、インバウンドを含めた観光業や農業、飲食業など色々な兼業で生計を立てているのですが、海外や首都圏から人が流れてこないことで苦境に立たされています。

財務的に厳しい小規模な団体も多く、「今の状況では夏休みのことまで考えられない」というところもすでに出てきています。

この冬は、例年以上に暖冬傾向もあって地方のスキー場とかは営業期間が短くなっていました。冬場の収入に苦心されているところが多かったところに、とどめを刺す形となってしまいました。

スキーキャンプの様子(写真提供:夢職人)

――休校の影響はGW以降の学校行事にも影響を与えそうですね。

学校再開がGW後なので少なくとも1ヶ月間は授業がなくなります。5月ごろの運動会など、元々夏休み前に行事を企画していた学校もありますが、秋に延期するか中止とすることもありそうです。夏休みも短縮される可能性が高いでしょう。

授業時間をとれないので、学校が再開したらどんどん授業をやるしかない。ある校長先生は「特に低学年は授業ばっかりやり続けるのはかなりきついだろう」と危惧されていました。

授業もしつつ、イベントや行事で息抜きもしつつ、学校に慣れてもらおうとしていたところが、もう授業を詰め込むしかないという状況に陥っています。

弓矢遊びのプログラムの様子(写真提供:夢職人)

存続の危機に瀕する支援団体。失われる子どもの体験

――過去にもリーマンショックや福島原発事故などの危機があったと思います。今回は何が違いますか?

一番は「人との接触を絶たないといけない」ということです。事業自体が止まってしまいます。色んなやり方を考えましたが、私たち体験活動団体の事業は、「実体験」を重視しているため、全てにおいて「人との接触」が必要になり、オンラインへの代替えは困難です。これでは、粘りようがありません。

仮にGW以降に感染症の状況が落ち着いたとしても、夏休みが大幅に短縮化される可能性が高いうえ、社会全体として「集団に対する忌避感」は、強く残ると思うんです。

いつ第2波・第3波がくるかわからないという状況の中で、イベントであれ、旅行であれ、人が集まることの回避は当然続くと思います。

加えて経済的な影響も確実に出てきます。夏のボーナスが出たから「これで夏休みに子どもにキャンプに行かせよう」ということもありましたが、今年は難しそうです。

感染拡大が終わっても、この先の不透明な状況から撤退せざるを得ない団体が出てくると思います。

野外料理のプログラムの様子(写真提供:夢職人)

――人が集まるということだけでなく、地域間の移動に対するまなざしという問題もありますね。

福島原発事故のとき、長期休みに福島県の子どもたちを県外で受け入れ、様々な体験活動に参加してもらうというプロジェクトに参加しました。これは、感染症ではないですから、受入れ先の方々は、前向きに協力してくれました。

しかし、今回は「コロナ疎開」と指摘されているように、「来てもらっちゃ困るよ」という反応もあると思います。受入れ先の地方には高齢者の方が多いので。子どもがウイルスを運んできたら困るというのは当然の声です。

首都圏から子どもが移動してくることへの「まなざし」がネガティブになるのはしばらくは続くだろうと思います。

――自然体験だけでなく文化やスポーツ等の活動なども厳しそうです。

文化活動も厳しいです。演劇もそうですし、ましてや室内で歌を歌うことなんてできない。3月の発表会とかも全部止まっている状況なので。

スポーツクラブも同様です。公共施設等の会場自体が締められていたりもしますし、いつ再開できるかわかりません。

ピアノ教室などの習いごとも、新型コロナの影響で危機に陥っている。 ©Natsuki Yasuda

――体験活動団体はどのような資金で活動しているのですか?

団体運営には大きく分けて4つのパターンがあります。1つ目は私たちのように参加費を徴収する受益者負担型のモデル。2つ目は寄付を集めて実施するモデル。受益者負担と寄付を組み合わせる形もあります。

3つ目は行政等からの委託モデル。4つ目は地域のボランティアの方々が手弁当で実施しているようなケースです。

新型コロナの影響が最初に出るのが受益者負担型だと思います。休業になると事業が実施できず、収入も得られないため、体力が持ちません。長期的には、寄付も不況の影響で減少していく可能性があります。

今回のインタビューはビデオ会議形式で行った(記事は2020年4月12日時点の内容)

委託モデルと手弁当で実施しているモデルは影響を受けつつも存続できる可能性が高いです。委託型の団体は年間予算で組まれており、施設管理なども含めて請け負っており、組織規模が大きいところも多いです。

逆に地域の方々が手弁当で実施している場合は、事務所もなく、専従職員もいないので、固定費がとても少ないという特徴があります。

――子どもたちの育ちという観点からすると公共性の高い領域だと思うのですが、国からの支援はないのですか?

子どもの体験活動は、古くから学校での推進という形で文部科学省が力を入れてきましたがあまり上手くいきませんでした。

学校の先生たちは体験活動に関する専門の指導を受けていません。そして、野外での活動は、安全上の問題から教室で指導するよりも多くの指導者が必要となりますが、その人員の確保も困難です。子どもたちを学校外に連れていって、海や山、川などで活動することは、教室の中よりもハイリスクなんです。

ツリークライミングの様子(写真提供:夢職人)

現地の受け入れ団体とのコーディネーションなども必要ですが、学校の先生方はそこまでの手間を割くことできません。力を入れている自治体や学校も一部ありますが、面で見るとなかなか進みませんでした。

その一方で、学校外の体験活動に対しての行政・自治体による支援は脆弱です。教育としての重要性は理解しつつも、娯楽的なレジャーとして見ている側面もあったと思います。だからこそ、民間団体が中心となって独自の進化を遂げるしかなかった領域だと言えると思います。

多くが受益者負担と民間寄付を組み合わせながら成り立っているのが現状です。

クライミングウォールの様子(写真提供:夢職人)

――団体が撤退すれば自動的に子どもたちの選択肢が減ってしまいます。

今回は、組織としての体力がある大手の企業や団体しか存続できないかもしれません。最近では、大手学習塾の子会社が子どものキャンプを企画運営していたり、旅行会社が運営しているケースもあります。

小さなNPOは子どもたちのニッチなニーズを埋める役割をしている場合も多いです。例えば、発達障害の子をサポートしている団体が宿泊型キャンプを運営している場合などもあります。大手だけが残ればいいというわけではありません。

――小さな団体が倒れることで子どもにとっての体験の多様性が失われる危機だということですね。

体験活動団体は何年、何十年という歴史の中でエコシステム(生態系)を少しずつ作り上げてきました。互いに競合しているというよりは、横の連携が要です。

それぞれの地域特性や専門性を活かしながら、互いに学び合い、業界全体の質を高めてきた歴史があります。海が得意な団体もあれば、山が得意な団体もあり、発達障害の子どものサポートに長けた団体もあります。子どもの状況や家庭のニーズに合わせて、紹介し合うこともよくあります。

川遊びの様子(写真提供:夢職人)

大手の塾がやってるキャンプだと塾での人間関係を引きづらなきゃいけないから「そこだけは勘弁してくれ」という話もあります。

塾も学校も、子どもたちの中でのヒエラルキーがあるので、キャラクターを演じなきゃいけないのは辛いんですよね。そういうのがない環境、ゼロベースでのびのびとやりたいという子もいたりして。

長い時間をかけて、価格も含めて、子どもたちがそれぞれのニーズに合わせて選択できる生態系ができてきたんです。今回の新型コロナの影響で撤退する団体が出てくると、そのバランスが大きく崩れてしまいます。

体験活動の喪失は低年齢の子どもにとって死活問題

――今、オンライン教育が注目されています。どう捉えてますか?

オンライン教育が普及すれば、様々なツールを活用して主体的に学ぶ子はたくさんいると思います。

今回の休校で「意外と学校行かなくてもやれるじゃん」という子が出てくるでしょうし、積極的な不登校も増えると思いますが、それはそれで良いと思っていて。

しかし、それはあくまである程度年齢が上の子で、かつ意欲が高い子にとっての話です。

小学校低学年の子たちは、自分の意欲とか興味関心、自分の特性や得手不得手について、様々な体験から刺激を受けながら考えていくという段階です。いきなりオンライン教育で主体的に学ぶというのは無理があります。また、すでに過度になっているネットへの依存度をさらに高めることにもなりかねません。

――主体的に学んでいく土台を作るのに学校外の体験活動が果たしている役割が大きいということですね。

そうです。体験活動は、特定の知識や技術を指導するものではなく、自らの体験から学ぶための方法やマインドセットを身につけるためのものです。

今の状況は低年齢の段階で子どもの意欲を高めるための働きかけが全て家庭に一任されてしまっている状態です。

塾やスポーツクラブ、音楽教室の先生とかキャンプで出会う人たちは、親じゃないところが良かったんですよね。

グループワークの様子。多くの学生・社会人ボランティアが活動を支えている(写真提供:夢職人)

高学歴で何でもできる親が、自分の子どもに何でも教えられるかというと、全然そういうわけではなくて。実際にやったことがある親ならわかると思うのですが、だいたいケンカになります。親子って「生徒と先生の関係」ではないので。これは関係性の問題です。

――目先では、子どもたちにどのような影響がありますか?

一つは身体への影響。例えば福島では、原発事故の後に外で身体を動かして遊ぶことができなくて、肥満の問題が何年も続いたんですよね。

今回も子どもたちが家で過ごす時間が増えることによって同じことが起こり得ます。

特に首都圏は地方と比べて非常に家が狭い。外出に対するまなざしも厳しい。長期化すればかなり深刻な問題になると思います。

――子どもたちの心の面はどうでしょうか?

心の問題は、既に出てきていると思います。ストレスは表現することが大切で、今の状況でも大人はSNSをやったり、zoomしながらお酒を飲んだりしていますよね。ストレスを解消する色々な方法を知っています。

未就学児や低学年は、遊びの中でストレスを解消しています。もちろん、室内でできることもあるんですが、家に軟禁状態にされている中では、親に相当な努力が求められてしまいます。

この状況が長期化すれば、子どもたちの発達に支障が出てくる可能性が高いと思います。

また、子どもにとって状況が理解できないのも辛い点です。ニュースを見て理解ができて諦めがつくような年齢ならまだいいんですけど、子どもにとって理解できないことはストレスが何倍にもなります。よくわからないけれど親から「外はダメ」と言われるというのはかなり辛いです。

――子どものメンタルヘルスにとって大きな問題だと感じます。

「不要不急」と言われますが、子どもの外出や外遊びが本当に「不要不急」なのかはしっかりと考えるべきだと思います。

今、この話をすると様々な批判があると思いますが、自分でストレスを表現できない未就学児や低学年の子どもたちにとって、長期間にわたって、外出や外遊びを禁止することが本当に良い状況なのかは、もっと考える必要があります。

今後、長期にわたって新型コロナウイルスと付き合っていく可能性も考えられます。この状況では、外に出ても集団遊びができなくなります。そうなると、親が子どもの相手をするという状況も続きます。

公園である子がほかの子に遊ぼうと声をかけたりする。近くにいる親同士がお互いの目を見て、子ども同士を引き離す。そんな光景も繰り返し目にしました。この状況なので仕方ないんだけれども、何とも言えない気持ちです。

5月の休校明けに、子どもたちのメンタルの状況がどうなっているのかが正直わからないですね。

―今後についてはどうでしょうか。

非常に難しいです。まずは外出自粛が解除され、「3密を避けましょう」くらいの状況に戻らないと手も足も出ません。親が働きに行けるようになるとか、ある程度日常の社会生活に戻っているというのが前提です。

それがいつになるか。GW明けに「次は5月末まで自粛」となると厳しいです。GW明けに学校側から改めて今年度のスケジュールが出ると思います。それが出てから次を考える形になると思いますが、おそらく夏休みは短縮になるでしょう。

民間の学校外教育に取り組む団体や企業にとっては「夏休みがない」ということは、夏期講習やイベント、キャンプ等を実施できず、事業運営上の致命傷になりかねません。

川遊びの様子(写真提供:夢職人)

全国の学習塾も5年前から倒産件数がずっと右肩上がりです。今回の臨時休業で4月に生徒が入らなければ倒産はさらに増えると思います。

まず受益者負担型の教育系団体から撤退を余儀なくされるのは覚悟しています。学習塾であればオンラインへの切り替えがきく場合もあるかもしれませんが、私たちのような実体験を重視してきた団体にとっては、次の一手の選択は大変に難しい状況です。

――現状を教えていただきありがとうございました。何とか乗り越えていける方法を一緒に考えていきたいと思います。

《取材後記》

新型コロナウイルスの影響で、今多くの子どもたちが体験の機会を得られないばかりか、今後体験活動を提供する学校外の団体の存続が危ぶまれている。

現在、体験活動団体が危機に瀕している理由は二つある。

一つは感染症との相性が悪いこと。人や集団との直接的な関わりこそが、体験活動の価値だ。感染症の拡大が危ぶまれる中、人との接触を避けなければならず、今は自粛せざるを得ない状況となっている。

新型コロナウイルスとの闘いは長期にわたることが考えられる。一旦収束したとしても、第2波・第3波を恐れ、人々はしばらくの期間、人との接触や長距離移動を回避する可能性が高い。

そうなると、子どもたちは体験活動に参加することが難しくなるし、団体も体力が持たなくなる。この問題は、短期的な資金繰りをつなぐだけではどうにもならない。

理由の二つ目は、学校外の体験活動の担い手たちの活動の基盤が脆弱であることだ。歴史的に国や政府の支援をほとんど受けてこなかったことにより、受益者負担や民間寄付などによって独自の進化を遂げてきた。

スキーキャンプの様子(写真提供:夢職人)

その中でエコシステムを作り、小さなNPOから企業まで、多様な担い手たちが日本全国で子どもたちに体験活動の場を提供してきた。しかしながら、脆弱な基盤ゆえ、不況に弱い。

一度活動を止めてしまえば、再開できる保障がない団体が多く、そうなると長い時間をかけて築き上げてきたエコシステムが一気に崩壊する可能性がある。

料理のプログラムの様子(写真提供:夢職人)

今、オンライン教育の普及が進み始めているが、全ての教育活動をオンライン化できるわけではない。

子どもたちの学びの土台を形成するには、五感を使ったリアルな「体験」が欠かせない。

文化・スポーツ活動や自然体験・社会体験等の場は、学ぶ意欲を育んだり、心身の健康を支える大切な役割を担っている。これらは決して贅沢品ではなく、生きるために必要な場だ。そして、これはオンラインでは代替できない。

このような大切な場を失いつつあることに、私は強い危機感を抱いている。

カヌー体験の様子(写真提供:夢職人)

子どもたちの多様な体験の場を守るため、感染症拡大防止に努めること以外に、今できることは何だろうか。

一つは他の業種と同様に、政府には手厚い休業補償や給付を求め続け、この自粛期間を乗り越えられるようにすることだ。

次に体験活動に対する社会のまなざしが重要だと思う。

体験の場がなくなることへの危機意識を多くの人と共有すること。そして、収束後の再開を心から待ち望んでくれること。これは危機に瀕している体験活動団体にとって大きな支えになると思う。

最後に、根本的な問題として、この脆弱な活動基盤を何とかしなければならないと思う。多様な学校外の体験の場を安定的に供給し続けるには、民間だけでなく公的な資金で支えていく仕組みも不可欠ではないだろうか。

写真提供:夢職人

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(執筆:今井 悠介
(編集協力:望月優大

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スタディ通信編集部(CFC代表理事)
小学生のときに阪神・淡路大震災を経験。大学在学中、NPOで主に不登校の子どもの体験活動や居場所作り、学習支援に携わる。卒業後、株式会社公文教育研究会(KUMON)に入社し、学習塾運営を行う。東日本大震災を契機に、チャンス・フォー・チルドレン(CFC)を設立し、代表理事に就任。Twitter: @imaiyusuke_cfc