スタディクーポン、卒業生の今1
©鈴木省一
あの頃は塾が居場所だった。
「努力は裏切らない」。
先生がいつも支えてくれた
原 美友紀(24歳)仮名
Hara Miyuki
宮城県石巻市出身。中学1年の時に東日本大震災で住家が全壊し、仮設住宅で過ごす。クーポンを利用して4年間学習塾に通い、大学進学。現在、仙台市内のIT企業でシステムエンジニアとして働いている。
クーポン利用期間2011年12月~2015年3月(中学2年から高校2年)
中学1年の時、生まれ育った宮城県石巻市で被災した。家は全壊し、避難所生活が始まった。津波で友人も亡くし、あの頃は「常に気を張りつめて生活をしていた」。大切なものを失ったのに、一人で考える場所も時間もない。
それから半年が経ち、避難所から仮設住宅へ移ることになった。部屋はプレハブで、隣家との壁も薄く、手足も十分に伸ばせなかった。夏は暑くて冬は寒い。そんな4畳の小さな部屋は、集中して勉強ができる環境ではなかった。
自分にとっての居場所は学習塾だった。CFCのクーポンを使って、仮設住宅から通い始めたのだ。学習塾の先生は「わからないところはすぐに聞いて」と、早朝から深夜まで勉強に付き合ってくれた。
先生が口癖のように言っていた「努力は裏切らない」という言葉。厳しかったけれど、自分のことを本気で思ってくれる優しさも感じていた。
2021年8月、宮城県石巻市にある日和山公園で撮影。石巻市内を一望できる。
社会人になる前、先生と再会し、進路の悩みを相談する機会があった。「中学生の時に『頑張れば何でもできる』という気持ちをもつことができたんだから、失敗してもいいからやりたいことをやってみなさい」。学習塾に通っていたのは10年も前のことなのに、今でも自分の生徒だと言ってくれる。
今春、仙台市内のIT企業にシステムエンジニアとして入社した。「研修中にチームで1つのホームページを完成させた時は嬉しかったです。まだ技術力の足りなさを感じていますが、早く一人前になりたいです」