スタディクーポン、卒業生の今5
©Natsuki Yasuda / Dialogue for People
避難所で奮闘した母の姿。
災害医療のプロを目指し、
コロナ病棟で働く
山城 友香(25歳)仮名
Yamashiro Yuka
福島県南相馬市出身。東日本大震災による原発被害で避難生活を送る。中学3年から4年間クーポンで通塾し、看護学校に進学。卒業後、都内の総合病院に看護師として勤務し、2020年にはコロナ病棟の立ち上げに携わる。
クーポン利用期間2011年12月〜2015年3月(中学3年から高校3年)
震災が起こった時は中学校から帰って福島県南相馬市の自宅にいた。勤務先にいた看護師の母とは電話が繋がらず、近くで起きている福島第一原発事故と津波のニュースに、ただただ不安が募った。
翌日帰宅した母の第一声は「ただいま」ではなく「原発が爆発した音が聞こえた!どうしよう!」。再会を喜ぶ余裕すらなかった。
数日後、母と移動した避難所には、原発事故で自衛隊すら来ることができなかった。物資が不足する避難所で目にしたのは、そこにあるものでケガ人の処置や感染症の対策をする母の姿。
「私が見た母は、全部がかっこよかった」。転々とする避難生活の中で、いつしか自分もDMAT(災害派遣医療チーム)で活躍する看護師になりたいと考えるようになった。
看護学校時代から使っている看護師資格取得のための参考書。びっしりとメモが書き込まれている。
中学3年から4年間クーポンを利用した。希望した看護学校へ進学することができ、今は都内の総合病院のコロナ病棟で看護師として勤務している。
「コロナ病棟には、息苦しさなどで本当に辛そうな方が多い。患者さんに寄り添うことを大切にしています」。コロナ病棟に関わるようになったのは、インターンの時から職場にDMATに入りたいと伝えてきたからだった。
緊急の時に、人を助けられる人に。「コロナ病棟の立ち上げ時は、感染が起こらないようシミュレーションを重ね、感染症マニュアルの作成などを行いました。胃が痛いこともありますが、今は目標に近づいている実感があります」