公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

チャンス・フォー・チルドレン設立10年レポート

CFC設立10年

スタディクーポン、卒業生の今3

父が薦めてくれた
薬剤師になって
地元の医療に携わりたい

園田 ひとみ(23歳)仮名

Sonoda Hitomi

宮城県仙台市出身。小学6年の時に東日本大震災で被災。中学3年から4年間、学習塾やピアノ教室などでクーポンを利用。現在、医療系大学の4年生。薬剤師を目指している。

クーポン利用期間2013年6月〜2017年3月(中学3年から高校3年)

東日本大震災で被災したのは小学6年の時だった。その頃、外科医の父は、家族が暮らす宮城県の名取市ではなく、単身赴任で石巻市の病院に勤務していた。父は震災後も医師不足がさらに深刻化した石巻に残り、寝る間も惜しんで病院や避難所を回って、治療に当たったと聞く。

1か月後に再会した父は10キロ以上もやせていて、ひげは伸びきっていた。それでも父は家族に対して辛そうな表情を一度も見せなかった。1年後、父は突然過労で倒れ、震災関連死と認定された。

高校に入って、医療系の大学を目指すようになった。一度は受験がうまくいかず、浪人時代に将来を白紙から考え直したこともあった。それでもやっぱり地元である宮城の医療に携わりたい。そう思い直して、薬剤師への道を進む覚悟を決めた。

「薬剤師は『ひとみは明るい性格だから』と、生前に父が薦めてくれた職業でもあります」

大学は薬学部に進学した。座学や試験、実習と忙しい毎日を送っている。

震災から10年が経った。今でも将来に悩むことはある。授業もアルバイトも忙しい。でも、もし父がいたら、きっと「ひとみなりに頑張ればいいじゃない。努力すれば身になるよ」と声をかけてくれる気がする。

「今も仏壇にお線香をあげる習慣はありません。10年経っても父を忘れることはなくて、思い出して悲しくなることもあるし、頑張ろうと思うこともある。最近は復興が進んだという報道が多いですが、今もまだ闘っている人がいます」

他の記事を見る

※プライバシーを考慮して仮名で掲載しております

TOPに戻る