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機能不全家族と学生ボランティアにできること(大学生ボランティアの声)

私はCFCに参加してから「機能不全家族」を知り、調べ、理解していくうちに、機能不全家族を理解することが、私たちが面談している子どもたちの背景の理解を促すのではないかと考えるようになりました。

◆機能不全家族とは

機能不全家族とは、読んで字のとおり、「物理的/精神的な暴力や虐待がある」「親が家庭に無関心、あるいは過干渉である」といったものから、「兄弟姉妹間・他者との比較が多い」など、家庭における家族の機能が良好な状態で安定しておらず、不安定で機能不全を起こしている状態をいいます。

臨床心理学博士・西尾和美氏の著書によると、日本の8割以上の家庭が機能不全家族であるといわれています。アメリカでは何と9割を超えているとの調査結果もあるそうです。しかし、産まれた頃からその家庭環境が「当たり前」である子どもたちには、自らが機能不全家族の一員であるという自覚はありません。私たちが面談している子どもたちの家庭も機能不全に陥っている可能性は十分に考えられるのです。

◆私たち大学生ボランティアにできること

私たちの立場から機能不全に直接働きかけ、改善することは困難ですが、面談を通じて子どもの心を楽にすることはできるはずです。機能不全家族に子どもが含まれる場合、子どもは日常的に大人の顔色を伺いながら、本意に反して、場面に応じて様々な役割を「演じて」しまうといいます。

それらの役割は「ヒーロー(家族からとても期待され、頑張り続けてしまう)」、「スケープ・ゴート(自分は愛されていない存在だと思い込む)」、「ロスト・ワン(自分は周囲から必要とされていない存在であると思い込む)」、「ピエロ(周囲への不安から、いつもおどけていたり周囲を笑わせたりする)」のように類型化されています。

◆子どもたちが「役割」を演じずに済むように

私が子どもと面談するときは、子どもたちが家庭の中で何かしらの「役割」を演じているのでは?なぜ相手はその役割を演じなければならないのか?を考えてみるようにしています。

私が以前面談していた子どもの中に、努力家で成績優秀、生徒会にも所属し部活動にも熱心に取り組む中学3年生がおり、話をしていく中で私は、「この子は、周囲の期待に応えられるように努力しすぎてしまう『ヒーロー』の側面を持っているのでは?」と感じました。努力は大切ですが、努力ばかりだと息切れしてしまう恐れもあります。

それからは、面談が息抜きの場になるよう、勉強や学校の話だけでなく、趣味や日常のおもしろい出来事等を多く盛り込むようにしました。結果的にその子は途中で息切れすることなく、第一志望の高校に入学することができたのですが、私の関わり方がその一助になっていれば嬉しいです。

このように、学問的に機能不全家族の考え方を全て理解することは難しくても、機能不全家族という言葉の意味や、それらの類型について知っておくことが、子どもの家庭生活の日常心理を想像し、相手本位の面談を行うために役に立つのではないかと考えています。

CFCの面談は、子どもたちにとって周囲の人間関係を考慮せずに1対1でコミュニケーションをとることができる機会です。ひいては、子どもたちが役割を演じずに済む機会にもなり得ると思います。

もし私が担当している子どもたちの中に機能不全家族の子どもがいるならば、ブラザー・シスターとして、子どもたちに役割を演じずに過ごす心地良い経験を積み重ねてもらい、彼らの将来にポジティブな影響を与えられるよう、ひとつひとつの面談を大切にしていきたいと考えています。(中里 大悟/東北学院大学 経営学部4年)

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【参考】
・cotree(2017年)「アダルトチルドレンを生み出す「機能不全家族」とは?」2018年2月15日アクセス。
・西尾和美(2015年)『機能不全家族』講談社。