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どの年齢の子どもを支援すべきか?

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CFCは、災害や家庭の事情によって経済的に厳しい状況に置かれている小学生~高校生に対して、塾や習い事で利用できる学校外教育クーポンを提供していますが、今回はCFCが「どの年齢の子どもにフォーカスして支援すべきか」ということについて考えたいと思います。

いつ学力格差が表れるのか?

文部科学省の「義務教育制度の改革の方向」という文章の中には次のような一文があります。

「脳科学や発達心理学の分野における研究成果からは,子どもたちの発達は,年齢の区分ごとにいくつかの段階があるとされる。その区切り方や具体的な発達の内容については論者によって様々な見解があるが,基本的に,小学校4年生に相当する年齢を中心にその前後1年くらいが大きな区切り目の一つとされることが多い。実際の学校教育の場においても,経験的に小学校4年生を区切りとして子どもたちの発達段階が大きく変化するとの意見が強い。」

僕自身、何人もの学習塾担当者や教員と話をしてきましたが、「学力格差が表れる時期」を尋ねると、ほとんどの方がこの「小4」という時期をあげます。文科省の考えだけでなく、ヒアリングをした現場の声を踏まえても、この時期の重要性が感じられます。

しかし、我々の活動が学校外教育格差の是正である以上、この時期が子どもの発達において重要という1点のみで支援対象を決めることはできません。教育費の支出状況等も無視することはできないからです。

教育費の支出が多い時期とは?

そこで、文科省「子どもの学習費調査」で、学年別の支出状況を確認してみました。やはり断トツのトップは「中3」で、公立中学3年生の学校外教育費の年平均額は、364,395円にもなります。続いて、小6→中2→小5の順で、進学期に多くの教育費が必要なことは明らかです。

ただ、もう少し細かく見ていくと、小4の時期にはやはり大きな変化があることも伺えます。学校外教育費は、学習塾や家庭教師等の費用にあたる「補助学習費」と文化・体験・スポーツ活動費にあたる「その他の学校外活動費」に大別されますが、補助学習費の上昇率が最も高いのが小3から小4にかけてです。特に学習塾費の上昇率は226%と、この時期に跳ね上がります。

つまり、この小4という時期を境に、学習塾に通う子が増え、学校外教育格差が生まれやすい構造になっています。また、学習塾以外の「その他の学校外活動費」についても、全学年の中で小3が最も高く、続いて小4となっています。

したがって、補助学習費が増えるだけでなく、その他の体験活動等に多くの支出があり、結果として学校外教育費全体では、中1や中2と変わらない程度の支出をしている現状があります。

学力はいつ育まれるのか?

そして、更に重要なのが、「学力はいつ育まれやすいのか」という点です。

これについては、シカゴ大学の経済学者ジェームズ・ヘックマンの認知能力(IQ等)に関する調査が有力です。ヘックマンの調査では、認知能力開発時期のピークを6・7歳~8・9歳。つまり、小1・2~小3・4と結論づけています。

更に、同氏の「教育投資に対する収益率」の調査では、初等教育が収益率が高く、年齢と共に収益率が低下していることを示しています。つまり、教育投資の効果が最も高い時期が小学校低学年です。(ちなみに収益率が最も高いのは就学前ですが、学校外教育支援というCFCの活動内容を踏まえ、割愛しています。)

これらを鑑みると、小学校低学年から重点的に投資をしていくことが必要であると考えられます。ただし、前述のとおり受験期に多くの教育支出があることも事実であり、仮にその機会を喪失した時の子どもの影響についても十分に議論する必要があります。

CFCは、まだまだ支援をできる子どもに限りがあり、対象を選ばざるを得ないというのが現状です。支援してくださっている皆さまからお預かりした大切な資金を、最も効果的に活用できるよう、今後もこの議論を継続していきたいと考えています。

<参考>

・文部科学省「義務教育制度の改革の方向

・文部科学省「平成24年度子供の学習費調査

・RIETI Discussion Paper Series 14-J-019
幼少期の家庭環境、非認知能力が学歴、雇用形態、賃金に与える影響

・教育投資に対する収益率
Carneiro, Pedro and James J.Heckman[2003], "Human Capital Policy", in Heckman, James J. and Alan B.Krueger eds. Inequality in America: What Role for Human Capital Policies?, The MIT Press.

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