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貧困についてとことん考えてみた(書籍紹介)

親子

私がCFCで働き始めてから1年半が経とうとしていますが、「貧困」と一口に言っても様々なケースがあることを現場で感じるようになりました。今回のクーポン利用者募集では、広報活動の際に、生活に苦しんでいる家庭を支援する団体さんを複数訪問させていただいたのですが、本当に多種多様な困難を抱えている方がいて、様々な方法で支援を行う人たちがいることを知りました。

今回の書籍紹介では、そんな生活支援の現場の様子が描かれた本をご紹介したいと思います。

◆「貧困」と「貧乏」の違い

著者は自立生活サポートセンター・もやいの理事である湯浅誠さんと脳科学者の茂木健一郎さん。本著で紹介されている施設はいずれも「パーソナルサポートセンター」と呼ばれるものです。

パーソナルサポートとは、人が何らかの生活苦や心身の不調を抱えた際に、支援機関や行政サービスにつないでいく取組みのことです。

一見すると、「そんなの自分で行けるじゃないか?」と思ってしまわれる方もいるかと思いますが、実際には役所のどの課に行けばいいのか、書類はどうやって揃えればいいのか分からない、それを聞ける知人もいないという人々が存在します。

以前の書籍紹介で“貧困”と“貧乏”の違いは、社会的なつながりの有無だと書きましたが、社会的に孤立してしまっている人々が、独力で行政サービスや支援制度につながるのは至難の業です。

パーソナルサポートセンターでは、そういった人々を当事者の視点に立ち、“社会につなぎなおす”活動を行っています。

◆“困難”の多様性

紹介されているセンターのひとつ、大阪府豊中市のセンターでは「就労までに距離がある人」を対象に、様々な分野の専門家が常駐しチームとして相談者に対応、一人ひとりにあった出口(就労等)づくりを行っています。

驚くのは、そこに関わる人間の多さです。障害の専門家、臨床心理士、看護師、キャリアコンサルタント、企業開拓の専門家と多岐に渡っています。彼らが定期的に集まり、それぞれの知見からサポート方法を模索するケース会議を実施し、相談者の情報は全てカルテとして保存されているそうです。

相談者の心身や就労スキルの状況を判断しながら、出口へとつなげていく支援の重要性を改めて考えさせられました。

本著の中では、他にも札幌や沖縄のパーソナルサポートの取組みが紹介されていますが、いずれも非常に参考になる取組みです。

冒頭でも触れましたが、一口に「困難を抱える子どもたち」といっても様々なケースが存在し、その状況に応じた支援が必要だという事がよく理解できる一冊ですので、ご一読いただければ幸いです。(鈴木平・シニアマネージャー)

▼本の詳細
・「貧困についてとことん考えてみた」(2012年10月、NHK出版)

・著者:湯浅 誠(1969年、東京都生まれ。社会活動家。現在、「反貧困ネットワーク」事務局長、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事。2009~12年、内閣府参与。)、茂木 健一郎(1962年、東京都生まれ。理学博士。現在、ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー。「クオリア(感覚質)」を手がかりに脳と心の謎に挑む脳科学者。)

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