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5年間クーポンを利用して東北大学に合格。将来は医療機器開発分野で一役を担いたい(高校3年・岩手県宮古市)

震災から5年が過ぎた今思うことは、復興はまだまだ進んでいないということです。大型トラックが道路を多く行きかう様子を見ていると、あたかも復興が進んでいるように見えますが、実際はそうでもないと私には思えます。

私が住む町の海の堤防は、現時点で計画の1割も完成していません。沿岸を通る道路に代わって、新しく高台に作られている道路も、まだ建設途中です。いまだに仮設住宅での生活を余儀なくされている人も少なくありません。完全な復興には、まだまだ時間がかかりそうです。

でも、私の学習する環境は徐々に整っていき、被災した当時よりも格段に良くなり、念願の東北大学に合格することができました。

◆私の生活を変えた「3.11」

私は、将来、医療機器開発分野で一役を担い、人助けができる人材になりたいと思い、医工学を学べる環境が整っている東北大学を志望していました。被災した当時、私は中学1年で、体育館で卒業式に向けた合唱練習をしていました。歌っている最中に伴奏者がピアノを弾く手を止め、どうしたんだろうと思った瞬間、今まで感じたことのない激しい横揺れが合唱練習中の私たちを襲ってきました。遊園地のアトラクションにもたとえようがない揺れでした。

揺れがおさまってから校庭に避難しました。けたたましいサイレンと防災無線が何度も鳴って、事態の深刻さが分かってきました。「津波が来る」という放送が何度もされましたが、学校は海から十分離れていたため、海の様子は全くうかがうことができませんでした。

自宅がどうなってしまったのか、自分の住む集落はどうなってしまったのかが分からず、不安なまま、帰宅できない日が何日間か続きました。数日後、帰宅は果たせたものの、自宅は跡形もありませんでした。

避難所生活が始まりました。しかし、決して良い環境ではなく、寒さをしのぐのが厳しかったです。余震が起きるたびに避難所の人々は怯え、慣れない生活でストレスが溜まっていきました。

◆仮設住宅でも続いた不自由な生活

およそ1年後、仮設住宅への入居が始まり、つらかった今までの暮らしから抜け出して、集団生活のストレスから解放され、勉強に集中できると思いました。しかし、仮設住宅には4畳半と6畳の部屋がそれぞれひとつずつしかなく、家族4人で過ごすには、とても不便で、思うように勉強できませんでした。

私の父は仕事の都合上、深夜に出勤するため、私が学校から帰るころには、床につかなければなりませんでした。日々、私たち家族のために、前を向いてがんばって仕事に励む父に、迷惑をかけたくないという思いで、父が寝ている傍らで、部屋を明かりを消して、電気スタンドの明かりをたよりに毎日机に向かって勉強していました。

英語の学習では、発音練習や音読をしたくても、仮設住宅では迷惑になると思い、外に止めてある車の中や、ときには押し入れの中で練習していました。不利な環境でがんばっていましたが、私はどうしても東北大学に受かりたい一心で、塾というさらに整った環境で勉強したいと思うようになりました。被災したため、経済的にとても苦しい状態で、それは叶えられないと思っていましたが、CFCクーポンのおかげで、念願の塾に通うことができました。

◆CFCクーポンを使って塾に通えるように。そして念願の志望校に合格。

塾には、CFCクーポンを使って週に1回のペースで通いました。塾の先生は、ときに模試の結果が分かるたびに落ち込んでばかりいる私をいつも励ましてくれたり、期末試験や模試等の対策を細かく指示してくれたおかげで、効率の良い学習法が身についたと同時に、自分の実力が上がったという感覚と、完全に理解できたときの爽快さが強くなっていき、勉強が楽しくなりました。また、先生がついているという安心感も日頃の勉強の原動力となりました。

また、CFCブラザー・シスター制度では、大学生の方々から悩みや相談に乗ってもらったり、大学生活全般について話を聞かせてもらったりしました。大学に入学する前から、大学生活をイメージすることができ、大学生活に対する不安はなくなっていきました。大学生に話をうかがえるチャンスは多くないので、貴重な体験でした。

東北大学に合格して、振り返ってみると、本当に多くの人の支えがあったと思います。家族や塾の先生の支え、そして塾に通って進路の実現に向けて勉強できるチャンスを与えてくれたチャンス・フォー・チルドレンの経済的支援がなかったら、決して東北大学に合格できなかったと思います。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

これからは進路の実現に向けて、東北大学で勉学に励んでいきたいと思います。支援していただき、本当にありがとうございました。

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