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相対的貧困とは何か?

CFCは9年間、子どもの貧困問題の解決に向けて取り組んできました。ここでは、日本の貧困問題を考える上で、重要な言葉である「相対的貧困」とは何かについて解説します。

厚生労働省の報告書によると、日本の子ども(17歳以下)の貧困率は13.5%(2018年)です。つまり、7人に1人の子どもが貧困状態に陥っています。先進国の中でも34カ国中10番目に貧困率が高く、深刻な問題となっています(OECD, 2014年調べ)。

子どもの貧困率(17歳以下の子ども)の国際比較(2010年)

出典:OECD(2014)Family database “Child poverty”

しかし、日本の街でがりがりにやせ細って今にも飢え死にしそうな子を見かけることはないのに、なぜ貧困の子どもが多いと言われているのでしょうか。それは「相対的貧困」と呼ばれる状態にある子どもを指しているからです。

◆相対的貧困の定義

貧困の定義は複数のものがありますが、大きく「絶対的貧困」と「相対的貧困」に分かれます。絶対的貧困とは、人間として最低限の生存を維持することが困難な状態を指します。飢餓に苦しんでいたり、医療を受けることがままならなかったりする人がこの状態に当たります。

一方で、相対的貧困とは、その国の文化水準、生活水準と比較して困窮した状態を指します。具体的には、世帯の所得が、その国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態のことです。OECDの基準によると、相対的貧困の等価可処分所得は122万円以下、4人世帯で約250万円以下(2015年時点)です。

日本の相対的貧困の基準となる所得(世帯人数別)

出典:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査」より作成

◆相対的貧困の子どもはどのような状態にあるか

相対的貧困の状態に陥ると、社会で多くの人が享受している「標準的な生活」を送ることができません。例えば、当法人でサポートしているお子さんたちには、以下のようなケースがあります。

・親が病気のために家事をしなければいけない子ども
・食費を切り詰めるために、母親が十分に食事をとっていないという子ども
・金銭的な理由で大学進学を断念する子ども
・家計を支えるため、毎日のようにアルバイトをしている子ども

こうした子どもたちは家庭内で何らかの課題を抱えているケースが多いです。OECDの調査(※1)によると、日本では、母子家庭の貧困率は、親が仕事をしている場合でも58%と、諸外国と比べて最も高い割合になっています。しかも、また、外見からはわかりにくく、住居や衣服の状況からは、貧困を認知するのが難しいため、支援の手を差し伸べにくいのが特徴です。

例えば、親がダブルワーク、トリプルワークといった無茶な働き方をすることによって、精神疾患や大病を患う場合も少なくありません。それによって、子どもは家事をしたり、兄弟の面倒をみたりしなければならなくなります。何よりも心の拠り所を失うことになります。余裕のなさは、家族関係(親子関係)にも影響を及ぼすこととなります。

そのほか、非行や虐待などの問題を抱えた子ども、不登校の子どもと、貧困状態であることの相関は高いとも言われています。

◆貧困は連鎖する

親の経済的な困難は、子どもにさまざまな影響を及ぼし、世代を超えて連鎖します。内閣府(2014)によると、生活保護世帯を全国平均と比較すると、中卒率は7倍、高校中退率は3・5倍、大学進学率は3分の1になっています。親の経済的な貧困によって、学習や体験の機会を失い、学力が低下し、不安定な就業につながり、子もまた貧困に陥るというスパイラルに陥る危険性があります。

◆「なんで僕だけ?」から「どうせ僕なんて」に

相対的貧困は、子どもの心理的な側面にも悪影響を及ぼします。周りのみんなにとっては当たり前の生活が、自分だけ享受できないという状態は子どもたちに破壊的なダメージを与えます。そして、次のような言葉を話すようになります。

「なんで僕だけ?」

一つひとつの貧困による機会の喪失は小さなことかもしれませんが、日本の相対的貧困の子どもたちは、生きていく中で、この言葉を何度も何度も繰り返します。そして、「なんで、自分だけ?」 を繰り返した子どもたちは、もうその言葉を言わなくなります。その代わりに、ある言葉を繰り返すようになります。それは次のような言葉です。

「どうせ僕なんて」

様々な機会を失い続け、「あきらめ」の感情を持ってしまった子どもたちは、支援団体とつながることすら困難な状況になってしまいます。

◆誰でも相対的貧困に陥る可能性がある

こうした日本の相対的貧困の問題は、誰にでも起こり得るものです。例えば、災害や病気で家族が亡くなったり、家庭の事情で離別したりして、ひとり親で子どもを育てながら非正規で働かなければならなくなるケースは、誰にでも起こり得ます。

そのような状態が継続すると、突発的な事情によってさらに困難に陥りやすくなります。当法人が支援しているご家庭では、無理な働き方や子どもを一人で育てるという過度なプレッシャーによって、親が病気にかかるケースも少なくありません。

そのような状況になると、もはや経済的な困りごとだけではなく、家庭全体として、様々な生活上の困難を抱えます。そして、家庭の不安定さが、子どもたちにも影響を及ぼし、様々な課題にもつながっていきます。相対的貧困は、私たちに身近な問題として捉え、早急に対策をとっていく必要があります。

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◆参考文献
※1: OECD(2008)「貧困率の国際比較」