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高等教育無償化を考えるー選挙で注目された政策の再考ー

10月22日に投開票された第48回衆院選は、近年例がないくらい「教育」政策に焦点が当てられました。

その論点は大きく2つで、就学前教育と高等教育の無償化ですが、ほぼすべての党が、授業料減免や奨学金制度(給付型)の拡充等の高等教育について触れていました。

この背景には、子どもの貧困、子育て世帯の負担増、奨学金問題(教育ローン問題)等があると思いますが、「教育は票にならない」と言われる選挙において、主要政党すべてが公約に掲げている点は異例で、本課題への関心の高さを表しています。

ただ、就学期の教育支援を行うCFCとしては、これらの議論に隠れている“高校までの教育(将来の自立につながる能力の育成)”という点がほとんど触れられていないことが気がかりです。

◆忘れてはいけない初等中等教育

例えば、内閣府の「平成23年度「親と子の生活意識に関する調査※1では、現実的な学歴を選択した理由は、「家庭に経済的余裕がないから」(4.3%)ではなく、「それが自分の希望だから」(64.4%)、「普通その学校までは行くと思うから」(23.7%)、「自分の学力から考えて(20.1%)」が多くなっています。

保護者の回答においてもこの傾向は同様で「子どもがそう希望しているから」(53.6%)、「子どもの学力から考えて」(33.1%)が、「経済的余裕がないから」(12.2%)を大きく上回っています。

また、ひとり親に限定した分析ではありますが、同調査の専門家分析※2でも「進路は総じて経済的問題よりも、子ども自身の希望と学力によって考えられていることになる」と結論付けています。

◆アクセスの問題に加えて、忘れてはいけないこと

これらが示しているのは、「自立して生きる意欲や能力を育むことと高等教育へのアクセス問題(無償化等)は、セットで考えるべき」だということです。

もちろん、高等教育の無償化は大賛成ですし、CFCの利用者や卒業生からも奨学金についての問合せは多く、当法人がもつ課題のひとつです。

ただし、それは就学期に投資し、子どもの将来に資する能力を高めることによって顕在化する課題で、そもそも希望をもてない、進学する力が育まれていない状態への対策がなければ、本来の問題点を見誤るリスクがあり、安易に大学進学だけを助長することにつながってしまいます。

ぜひ皆さんもこの機会に、高等教育無償化、ひいては日本の教育政策について考えてみてください(奥野慧/代表理事)。

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【参考文献】
※1 内閣府(2012)「平成23年度「親と子の生活意識に関する調査」」(2017.11.8.確認)
※2 稲葉昭英(2012)「2 ひとり親世帯と子どもの進学期待・学習状況」(2017.11.8.確認)