CFCクーポン事業と大阪市塾代助成事業の比較―課題の違い
仙台にも夏がやってきました。昨年末まで私が暮らしていた大阪と比べて、日没後の仙台は涼しいことが多く、大阪の熱帯夜よりも快適に過ごしています。
大阪の暑さを思い出すとともに、仙台での暮らしや業務にも慣れてきた最近になって、CFCの大阪事務局で携わっていた事業について改めて考えるようになりました。
◆「大阪市塾代助成」と「CFCクーポン事業」
私は、CFCの大阪事務局では「大阪市塾代助成事業」の運営事務局の一員として業務にあたっていました。大阪市塾代助成事業は、大阪市が市内に居住する中学生を対象に「塾代助成カード」を交付し、塾や習い事にかかる費用を毎月1万円分助成する事業です。
他方、現在勤務しているCFCの仙台事務局では、寄付を原資とするCFCクーポン事業(CFC東日本・CFC西日本)の運営に関わっています。最近は両者の違いを意識することで、CFCクーポンに存在する課題についてより具体的に理解できたように思います。
◆子どもたちに情報が届きやすい大阪市塾代助成と、届きにくいCFCクーポン事業
まず、対象となる子どもたちにアプローチする段階から、両者の違いは表れています。塾代助成事業では基本的に、大阪市内に居住する全中学生の家庭に直接、事業への申請案内を送付しています。これは大阪市という行政組織が事業の実施主体であるからこそ実現できることであり、加えて中学生の約半数、およそ3万人を対象としている事業であることからも、ある程度地域に事業が浸透していて、利用申請にたどり着きやすくなっている印象があります。
一方、CFCクーポン事業に関しては主に学校を通じてチラシを配布いただいているのですが、例えば学校に通っていない子どもたちなど、どうしても情報が届かない層が一定数存在します。
また、塾代助成事業には年中いつでも利用申請ができるのに対し、CFCクーポンへの利用申請のタイミングは主に年1回となっています。このことはCFCクーポン事業の課題のひとつでもあり、少しでも解消を図ろうと、年1回の利用者募集とは別に、子どもたちの支援に関わるNPO等の団体や、不登校状態にある生徒と繋がっている行政機関からの紹介によって申請をいただいてクーポンを随時提供する枠を設けています。
CFCクーポン事業では、様々な状況下にある子どもたちに直接情報を届けられない以上、こうしたCFC外の団体・機関を通じ、ネットワークを拡げることが非常に重要になってきます。
◆規模が大きくなることで難しくなること
一方、大阪市塾代助成事業のように規模が大きくなることで難しくなることも出てきます。大阪市が発表している「大阪市塾代助成事業の実施状況」によると、平成29年11月に一度も塾代助成カードを利用しなかった人数は4,001人であり、交付者数に占める割合は21.0%となっています。
対して、集計期間も異なるため単純な比較はできませんが、2017年度のCFCクーポン(東日本・西日本)を一度も利用しなかった人数は20人、割合としては4.9%であり、規模が大きくなるにつれて子どもたち一人ひとりの状況に合わせたきめ細かいフォローがしづらくなることは否めないと感じます。(なお、利用されなかったクーポンは、翌年度以降のクーポン費として充当されます。)
仙台で活動するようになって、大学生ボランティアであるブラザー・シスターが子どもたちと面談をしたり、私たちスタッフが保護者の方から状況をお伺いしたりと、個別にしっかりとお話をすることで、CFCクーポンの利用につながった機会がいくつもありました。もちろん大阪市の塾代助成事業でもフォローはしていますが、CFCクーポン事業と同じ水準の機会を設けようとすると、かなりの人手が必要になってしまいます。
◆クーポンを有効活用できていないケースを減らすための試み
ただ、CFCクーポン事業での未利用者数「20人」という数字を、「少ない」と捉えるわけにはいきません。もちろん、望まない形で無理にクーポンを利用してもらうことがあってはなりませんが、CFCでは今後、クーポンを全く、あるいはほとんど利用できていない子どもたちそれぞれにどんなニーズがあり、利用できていない要因がどこにあるのかに目を向けるため、これまでに積み重ねてきた情報の分析に取り組もうとしています。
一筋縄ではいかないチャレンジになりそうですが、クーポンを届けることができた子どもたちそれぞれに合った選択肢が少しでも多く提供できるよう、努力していきます。(仙台事務局員/吉岡新)
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【参考】
大阪市子ども青少年局(2018)「大阪市塾代助成事業の実施状況(平成30年1月末現在)」