データから見えるコロナ禍での教育格差の拡大 -学校外で子どもたちの学びを支える重要性
こんにちは、東京事務局の山本です。新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、早くも2年半近くが経過しました。
当初からCFCでは、コロナ禍における教育格差の拡大に警鐘を鳴らしてきました(参考)。近ごろは研究者による詳細な調査が進み、コロナ禍において、家庭の社会経済状況による教育格差が更に拡大する可能性が高いことが明らかになってきています。
特に学校外教育の重要性に触れられているものも多くあり、今回は、このような調査結果の一部をご紹介したいと思います。
■勉強時間が特に減少したのは、学校外教育を受けられない年収の低い家庭
昨年7月に発表された三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社と日本財団が実施した調査※1では、小学生から高校生の子どもがいる世帯を対象に、コロナ禍がもたらした子どもの教育等への影響を分析しています。
本調査では、新型コロナによって多くの学校が臨時休校となっていた2020年5月、年収の低い家庭で特に勉強時間の減少が著しかったということが明らかになっています。
また、年収の高い世帯は、臨時休校期間に学校外の勉強時間を増やし、学校再開後もそれが継続していることも分かっており、経済状況の良い子ども等は、学校外での勉強時間を増やすことによって、学校での勉強時間の減少を穴埋めしたとも述べられています。
なお、内閣府は「令和4年度年次経済財政報告(経済財政白書)」※2において、高所得者において学習塾等の補習教育費が伸びていることから、高所得世帯は休校等の影響を補完するために学校外教育を増加させたことに言及しています。
■社会経済的に厳しい家庭の子どもは、臨時休校中に宿題以外の学習ができていない
今年3月に発表されたベネッセ教育総合研究所の調査※3では、臨時休校中の家庭学習について、社会経済的に厳しい家庭の子どもであるほど、「学校の教科書の予習・復習」「学習塾教材」を使って勉強ができていないという点が明らかになりました。
一方、学校の宿題は、家庭環境に関わらず一律に出されるため、家庭で違いが生じにくい事も分かっており、宿題以外の家庭学習では、家庭の社会経済状況による違いがダイレクトに表れてしまう点についても述べられていました。
これらのことから本調査では、休校だけでなく夏休みなど、学校の機能が低下したときに、社会経済的に厳しい家庭の生徒の学習をどう支えるかは大きな課題であることが指摘されています。
■教育格差の更なる拡大を防ぐために
このように、コロナ禍において、子どもたちの学習時間や学校外での学習状況については、家庭の社会経済状況や収入別で格差が生じており、今後さらに教育格差が拡大する可能性が高いと考えられます。
改めて認識させられるのは、パンデミックや災害のような、社会の機能が弱まった時に最も影響を受けやすいのは、低所得家庭など、元から社会経済的に厳しかった家庭だということです。
コロナ禍で学習や体験の機会が失われたということは、全ての子どもたちに共通したことではありますが、その中でも代替手段を得られない家庭の子どもや、自力で遅れを取り戻せない子どもは置きざりになりがちです。
学校外で子どもたちの学びを支える重要性は、臨時休校時だけではなく、学級・学校閉鎖やコロナ罹患によって長期間学校に行くことができない子どもたちが多く存在する現在も高くなっています。
コロナ禍における教育格差の更なる拡大を解消するには、家庭間の経済格差を食い止めること、そして子どもの間の学びの格差を食い止めること、それぞれに支援の拡充が欠かせません。
CFCは引き続き教育格差の拡大を食い止めるため、子どもたちのサポートに全力を尽くしてまいります。(東京事務局/山本雅)
【CFCの活動についてもっと知りたいあなたへ】
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日本の子どもの貧困、教育格差の現状や、CFCの活動をより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。
※1 日本財団・三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(2021)「コロナ禍が教育格差にもたらす影響調査-調査レポート-」
※2 内閣府(2022)「令和4年度年次経済財政報告(経済財政白書)」
※3 ベネッセ教育総合研究所(2022)「コロナ禍における学びの実態―中学生 ・ 高校生の調査にみる休校の影響」