子どもの自尊感情を育むために必要なこと

先日、30年以上スクールカウンセラーとして勤めていらっしゃる日本いのちの教育学会会長・近藤卓先生の『乳幼児期から育む自尊感情─生きる力、乗りこえる力』という書籍を手に取りました。
本書は、近藤先生の長年の臨床経験をもとに、「自尊感情」を取り巻く様々な概念の整理とその解説が行われている1冊です。
10年前の書籍ですが、読みやすく、かつ感覚として腑に落ちる内容でしたので、ここで紹介させていただきます。
■自尊感情は、ほめて伸ばすものではない?
本書では、自尊感情を以下2つに分類しています。
(1)「社会的自尊感情」
風船のように膨らんだり縮んだりする自尊感情。他人にほめられると大きくなるが、失敗すると一気に縮んでしまう。
(2)「基本的自尊感情」
失敗しても揺るがない自尊感情の土台。「自分は自分でいいのだ」と無理なく思える感情。
そのうえで著者は、「社会的自尊感情」は高くても、「基本的自尊感情」が低い子どもたちを特に注意深くみる必要があると述べていました。
というのも、彼らは一見よくできる子どもたちなので大人から見て心配の対象になりにくいのですが、「褒められるように頑張り続けている」状況なので、失敗するとたちまち危機に瀕してしまうためです。
では、どうすれば「基本的自尊感情」が高められるかというと、信頼できる他者との「共有体験」が大事だそうです。
共有体験とは「体験を共有し、その体験を通して感情を共有すること」。具体的には、信頼できる他者と、食事、キャンプ、授業などの様々な体験を通じて、感じたことを伝え合うことだと述べられていました。
こういった小さな積み重ねによって、子どもたちは自分自身を肯定・受容していくそうです。

■体験の重要性
私たちの活動は、スタディクーポンやハロカルといった仕組みを通じて、子どもたちに様々な学び(学習や体験)の機会を届けるものです。
本書を通じて、私たちが提供する機会は子どもたちにとってかけがえのない「共有体験」になりうるものであり、子どもたちにとって自尊感情の育成という面においても重要であることを改めて認識しました。
8月は子どもたちにとって学びの格差が開きやすい『夏休み』。そして、その後は子どもたちが精神的に落ち込みやすい夏休み明けとなります。
子どもたちが勉強すること、文化やスポーツに触れること、キャンプに参加すること。
そして、そこで出会った地域の大人や友人たちと関わり合い、感情を共有すること。
このような体験を通じて、子どもたちが「自分は自分でいいんだ」と信じて生きていけるよう、引き続き子どもたちの学びの機会を支えてまいります。(山本雅/東京事務局)
【一人でも多くの子どもたちにクーポンを届けるため、ご協力をお願いします】

私たちがクーポンを届けられる人数は、集められた寄付金額が元になって決まります。次回のクーポン提供に向け、すでに200名以上の子どもたちが支援を待っています。
一人でも多くの子どもたちに支援を届けるため、皆さまのご協力をお願いいたします。
【参考】近藤卓(2015)『乳幼児期から育む自尊感情─生きる力、乗りこえる力』、エイデル研究所。