【実施報告】2/23(月)「被災地・子ども教育調査」報告セミナーのご報告
2/23(月)に、東日本大震災「被災地・子ども教育調査」報告セミナーを開催いたしました。
「被災地・子ども教育調査」は、CFC教育クーポン応募者など被災家庭2,338件を対象に、普段の生活や教育等についてアンケート調査を行ったもので、今回のセミナーはその分析結果の発表の場となりました。なお、この調査の結果の分析については、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社様が主催している「ソーシャルビジネス支援プログラム」の一環で、同社のプロボノ社員の方々にご協力いただきました。
セミナー当日は、企業のCSR担当の方々やNPO関係者の方々、メディアの方々など、総勢100名以上の方々にお越しいただきました。ご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました!
それでは、プログラムに沿って、セミナーの内容をご報告させていただきます。
1.開会のご挨拶
はじめに、CFC代表理事の今井悠介からご挨拶をさせていただいた後、今回のセミナーの共催企業である三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の革新創造センター長 兼 経営企画部部長の土屋英敏さま(写真・左)と、「被災地・子ども教育調査」の協力団体である公益財団法人 東日本大震災復興支援財団の佐々木梨乃さま(写真・右)より、メッセージを頂戴いたしました。
2.「被災地・子ども教育調査」分析結果の報告
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 喜多下悠貴研究員より)
ご挨拶の後は、いよいよ分析結果の発表です。今回は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社様のプロボノとして、本調査の分析に協力してくださった 喜多下研究員から分析結果の報告をしていただきました。
今回の調査は、岩手・宮城・福島を中心とした被災家庭2,338件(※CFC教育クーポン応募者、東日本大震災復興支援財団「まなべる基金」奨学生とその保護者)を対象とした調査で、被災した子ども達の現状をデータで表す貴重な調査です。
喜多下研究員からは、分析の結果として以下のことが発表されました。
1)経済状況が十分に回復していない被災家庭がいまだに存在している
・震災後4年が経とうとする現在においても、震災前に比して経済状況が十分に回復していない家庭がまだまだ存在することが明らかになりました。特に、この状況には、被災を発端とする人的被害や親の雇用状況の変化等が影響している可能性が考えられます。
2)家庭の経済状況が子どもの教育機会を制限してしまっている
・被災による家庭の経済状況の悪化は、アルバイト就業による家庭学習時間の減少や、学習塾・習い事等に通うことを断念するという形で、子どもの教育機会の格差につながっている可能性が示唆されました。
・また、内閣府が行った全国調査と比較すると、今回調査対象となった被災した子どもたちの方が、学習意欲が高いにもかかわらず、経済的な理由によって学校外教育を受ける機会が失なわれている子どもが割合として多いことが明らかになりました。
3)家庭の経済状況を見て、子どもが自らの希望を抑え込んでしまっている
・今回調査対象となった子どもや保護者は、全国調査と比較して、子ども・保護者ともに現実的な進学先(教育段階)を理想の進学先より低く見積もる傾向がありました。
・その理由として「家庭に経済的な余裕がないから」と答えた保護者と子どもがそれぞれ36.8%、43.3%にのぼりました。経済的な理由によって、大人たちだけでなく、子どもたちが希望を押さえこんでしまっていることが懸念されます。
※当日の発表資料はこちらからご覧いただけます。
3.「阪神・淡路大震災との比較からみた東日本大震災被災地の課題」
(弁護士法人芦屋西宮市民法律事務所代表社員 津久井進弁護士より)
次に、CFCの監事を務めていただいている、弁護士の津久井進先生から「阪神・淡路大震災との比較からみた東日本大震災被災地の課題」と題して、東日本大震災で被災した子どもたちがかかえている課題を解説していただきました。津久井先生は、阪神・淡路大震災があった1995年の4月に弁護士登録をしてから、災害復興支援に深く携わっていらっしゃる災害の専門家です。
津久井先生は、因果関係こそ不明だが、阪神・淡路大震災が子どもたちに多方面で、例えば、トラウマや非行、そして学力等にも大きな影響を及ぼした可能性がある、と指摘します。東日本大震災と阪神・淡路大震災で異なる点はあれど、こういった状況は、東日本大震災で被災した子どもたちについても、今後引き続き、注意して見ていく必要があります。
4.「被災した子どもの現場の状況 教育支援のこれから」
(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン 代表理事 今井悠介より)
最後に、CFCの代表理事 今井悠介から被災した子どもたちの事例や、今後必要な教育支援について、お話させていただきました。
被災地では、震災から4年が経ち、その間に震災のダメージから回復した家庭とそうでない家庭の間で「格差」が広がっています。この「格差」は、まだ被災のダメージから回復できていない家庭の子どもたちの心に、大きなダメージを与えています。大学進学費用の援助や、放課後の学習機会を保障するための教育支援は、これからさらに重要度が増してきます。また、被災地で起きている課題の根本には、所得格差によって学ぶ機会の格差が生まれる日本全体の社会構造があります。今後も被災地の子どもたちに寄り添い続けながら、貧困が次世代に連鎖しない社会のモデルを作り、課題を根本から解決していくことが重要だと訴えました。
5.質疑応答
講演の最後には、登壇した3名に対して、会場にお越しくださった皆さまから質問が寄せられました。
CFCの支援に未だアクセスできていない子どもたちに支援を広げたいというNPO関係者の方からのご意見や、CFCがどのように子どもたちの心のサポートを行っているのか、その効果を問う質問、そして被災と経済的な困難を結び付けることに対しての疑問が、登壇者3名にぶつけられました。
6.クロージング
最後に、CFCのアドバイザーを務めていただいている、防衛医科大学校 医学教育部教授の高橋聡美先生からメッセージをいただきました。
震災以来、継続して遺族・遺児のグリーフサポートを行っていらっしゃる高橋先生は、東京では震災の記憶が風化しつつあるが、東北は震災が起きてから時間が止まってしまっている、このままでは、仮設住宅でオリンピックを見る人がいるかもしれない、と東日本大震災の記憶の風化に警鐘を鳴らしていらっしゃいました。
大変ご多忙な中ご参加いただいた皆さま、ご登壇いただいたゲストの皆さまには改めて、心からお礼申し上げます。今回のセミナーが、東日本大震災で被災し、経済的に困難な状況に置かれている子どもたちの現状について、ご理解を深めていただき、再考していただくきっかけになることができたなら、スタッフ一同、大変光栄に思います。
なお、「被災地子ども教育調査」の分析結果は、本年春~夏ごろに白書として発行することを考えております。今後も、CFCは、被災した子ども達がどのような状況に置かれているのかを定量的に社会に発信し、ひとりひとりの子どもたちにより適切な支援を届けられるよう全力を尽くしていきたいと思います。
◆セミナーで報告した調査結果は、数多くの新聞記事に掲載されています!
今回のセミナーには多くの報道関係者の方々にもご来場いただきました。先日から、多くの新聞社様に調査結果の一部を記事にしていただいています。ぜひご覧ください。
・神戸新聞(2/23付)「東日本大震災 被災家庭に低所得層増 西宮の団体調査」
・Yahooニュース(2/23付)「東日本大震災 被災家庭に低所得層増 教育格差拡大恐れ」
・日本経済新聞(2/23付)「被災家庭の父親、非正規雇用増加 公益社団法人調べ」
・デイリースポーツ(2/23付)「大震災被災家庭、正社員が減少」
・河北新報(2/23付)「大震災被災家庭、正社員が減少 父親職業でアンケート」
47NEWS、Livedoor NEWS、Excite News、徳島新聞、宮崎日日新聞、日本海新聞、新潟日報、東奥日報、秋田魁新報、山陰中央新報、千葉日報、長崎新聞、上毛新聞、岐阜新聞、北日本新聞、静岡新聞、北海道新聞、山陽新聞、京都新聞