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NPOにとって「白書」とは?

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CFCでは、東日本大震災で被災した家庭2,338件へアンケート調査を行い、その結果を社会に対して発信するため、現在「被災地・子ども教育白書」の制作費用を募っています(プロジェクトの詳細は、こちら)。

日本では、多くのNPOや社会事業家の方々が、当事者に対する調査を行い、白書としてまとめています。例えば近年では、若者の就労支援を行うNPO法人育て上げネットが、無業の若者の実態をまとめた「若年無業者白書」が話題になりました。私たちのように社会課題の解決を目的とした非営利組織(NPO)にとって、「白書」をつくることには大きな意義があります。

◆白書の意義①「正しく知る」こと

一つは、私たち自身が、解決すべき課題の実態や背景、問題が起こる原因等を「正しく知る」ということです。私たちは、所得格差による教育格差の問題、特に放課後の学びの機会の格差に焦点を当てて、貧困の連鎖を断ち切るための取り組みをしていますが、まだまだ明らかになっていないことはたくさんあります。

例えば・・・

「親の教育関心度が低かったり、十分な養育がなされていない子どもたちの生活実態はどのようなものなのか?」

「また、そのような子どもたちが放課後の無料学習やCFCの支援にアクセスできない理由は何か?」

「貧困家庭の子どもたちは放課後どんな時間の使い方をしているのか?」

「震災から3年半が経った現在の子どもたちや保護者の困りごとは何か?」

・・・など、挙げるときりがなくいくらい、従来の調査研究だけでは明らかになっていないことは多くあります(もちろん個別ケースから仮説を立てることはできますが)。子どもや保護者に対して適切なサポートを行い、「子どもの貧困」という大きな社会課題を解決するためには、自分たちの「思い」だけで動くのではなく、実態を正しく知ることから始めなければいけません。

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◆白書の意義② 子どもたちを取り巻く様々な関係者を活動に巻き込むこと

それだけではありません。調査を進めてわかったことをまとめて発信することで、子どもたちを取り巻く様々な関係者を活動に「巻き込む」ことに大きな意義があります。この4年間で痛感したのは、私たちが解決しようとしている社会課題を「CFCだけで」解決することは非常に難しいということです。

自治体、教育委員会、ケースワーカー、学校の先生、地域で生活支援をする民間NPO、企業、市民の方々等、多様な人たちが、それぞれの立場から、必要な役割を担っていかなければなりません。そのためには、子どもや保護者の実態や課題をしっかりと可視化するとともに、それを共有し、それぞれの役割を示す必要があります。

特に、CFCの場合は、親の意欲が低い家庭の子どもに対して、支援を届けられていないということが大きな課題だと感じています。彼らに必要な支援を届ける手立てを考えるためにも、これから数年間かけて調査と発信を続けていく必要があります。

今回制作する白書が課題解決に向けた新しい一歩になるよう、引き続き全力で取り組んでいきたいと思います。

※追記
2015年11月30日に、「東日本大震災被災地子ども教育白書」を発刊しました!⇒白書の詳細はこちら

【参考】
NPO法人育て上げネット

若年無業者白書(著者:工藤啓、西田亮介 編集:NPO法人育て上げネット)