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受験シーズンに思うこと-狭められる「受験」の選択肢-

受験

現在CFC西日本では、生活保護世帯の高校3年生がバウチャーを利用して受験勉強に励んでいます。毎年、受験シーズンのこの時期は嬉しい報告がある一方で、彼らの葛藤を感じたり、厳しい現実について考えさせられる時期でもあります。

◆経済的な事情で狭められる「受験」の選択肢

ある利用者は、関西トップクラスの学力がありながら、「家庭から通学可能な範囲の大学」という条件で、志望大学を変更しなければなりませんでした。彼女には「将来を悲観していた自分を救ってくれた先生のような教師になる」という夢があり、かつそれを叶えるための十分な学力があります。しかし、現実として経済的な理由から選択肢が狭められてしまいました。

また、ある利用者は「医者になる」という夢を叶えるため、合格した看護学科を辞退して浪人する道を模索しています。彼は、自身の病気がきっかけで小学生の時に医者になることを目指し、以後十分な学習環境がない中で自学自習に取り組んできました。CFCは、昨年度から彼に対してバウチャーを給付し、彼は初めて通ったという塾や予備校で懸命に努力していました。

受験が始まり、センター試験の成績が思わしくなかった彼は、2次試験で地方大学の医学部を受験する選択肢しかなくなってしまいましたが、受験のために地方に滞在する旅費や進学後の1人暮らしに掛かる費用を工面することが難しく、2次試験を受けないという選択をしました。生活保護制度では、18歳になると親の扶養から外れ彼の分の保護費は打ち切りとなります。仮に彼が浪人を選択をした場合は、非常に厳しい環境で1年間を過ごすこととなります。

勉強中 (2)

◆個別的な支援の必要性を感じる受験シーズン

CFCでは、これまで小学生から高校生の子どもに対して、学力や学習意欲の向上に焦点を当てて支援をしてきました。しかし、彼・彼女のように将来への展望があり、かつ学力がある子どもが経済的な理由で進路変更をしたり、選択肢が狭められたりするケースを目の当たりにすると、受験期やその後の支援についても検討していかなければならないと強く感じます。確かに、貧困世帯の多くは相対的に低学力、低意欲という傾向があり、その部分への支援は非常に重要です。しかし一方で、意欲と学力を備えながらもその道が絶たれてしまうケースも防いでいかなければ、我々の目的である、「子どもたちの将来の自立を支える」ことはできません。

厚生労働省の調べでは、生活保護世帯に属する子どもの大学等進学率は19.2%(H25.3時点)となっています。これは同年の全国平均53.2%より30ポイント以上低い数字で、この問題の大きさを表しています。受験シーズンは、我々にとっては達成感や喜びを感じる瞬間でもあり、このような問題を痛感する時期でもあります。今回感じた悔しさや無力感は、今日からの活動の中で晴らしていきたいと思います。

参考:子供の貧困対策に関する大綱

文責:奥野慧(チャンス・フォー・チルドレン代表理事)
※このコラムは、CFCのメルマガ2015年2月号に掲載したものです。

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