ニュース

高卒と大卒の違い

キャリア

昨年の「東日本大震災被災地・子ども教育白書2015」発刊記念イベントのパネルディスカッションの中で、CFCアドバイザーの先生から、CFCに求めることとして「複線的なキャリア」を描くことについて話が出ました。

◆「大学進学」だけではない複線的なキャリア

そこでは、近年、地方の高校の進路指導では、特に優秀な生徒ほど大学ではなく就職を勧める傾向があること、そしてCFCはそのような事実も踏まえて、大学進学だけではないキャリアイメージを子どもに提供することが必要だという議論がされました。

確かに、「東日本大震災被災地・子ども教育白書2015」にも掲載のとおり、東北と東京では高卒後の進路状況が大きく異なっています。例えば東京の場合、高卒後に就職を選ぶ割合は5.9%ですが、岩手・宮城・福島の3県では26.1%となっており、4倍以上の差があります。これは、子どもの将来の自立を目指して事業を展開する当法人としては見過ごすことのできない事実です。

ディスカッションの中で出たように、東北での事業展開は、大卒を前提としたキャリアだけではなく、高卒から就職、そして自立につながる流れも意識して事業を設計していく必要があると感じます。

think2

◆なぜ、CFCが大学進学を後押ししてきたか

ただ、あくまで「自立につながる」という点は押さえた上で考えていかなければなりません。そもそも、CFCがなぜ大学進学を後押しする形で教育支援を行っているのか、その理由は子どもが自立する可能性の高さにあります。

例えば、高卒と大卒の生涯賃金を比較すると、高卒では1億9240万円、大卒では2億5440万円でその差は6200万円になります。仮に奨学金を借りて大学進学し、利息を含めて返還したとしても十分に元がとれるだけ、高卒と大卒には収入の差があります。

しかし、次のようなデータも存在しています。これは、高卒と大卒の生涯賃金を、更に企業規模別に分類したものですが、これを見ると高卒で1,000人規模の会社に入った場合の生涯賃金は、大卒で10人以上(99人以下)の企業に入った場合の生涯賃金を上回り、かつ大卒で100人以上(999人以下)の企業の場合とほぼ同等になります。

▼高卒と大卒の企業規模別生涯賃金
高卒【1,000人以上2億3,300万円、100人以上1億8,500万円、10人以上1億6,200万円】
大卒【1,000人以上2億9,300万円、100人以上2億3,600万円、10人以上1億9,400万円】

つまり、高卒と大卒という差だけでなく、どの程度の規模の会社に就職するのか、これも賃金に大きな影響を与えていることがわかります。

pc2

◆これからの子どものサポート

CFCとしては、将来、高収入になるように子どもたちを育てようという考えはありません。ただ、一定所得以上を得ることができ、現在の経済的に厳しい状況から脱すること、そして経済的、社会的に自立した大人になることを目指して支援を行っています。また被災地で言うならば、長期的な復興に寄与する人材を育成する目的も兼ねています。

「これらの目的に沿った時に、現在の進学を後押しするだけの支援で良いのか?」

「もっと地域の中で生きていくスキルや知識を学ぶような機会も必要ではないのか?」

「そのためのバウチャー利用先を作ったり、発掘したりすべきではないのか・・・。」

現在CFCでは、このような議論も行われています。今後は、より多くの子どもたちに教育機会を提供していきつつ、更にバウチャーの効果を高められるように、地域の特色も踏まえた適切な支援の形を模索していきたいと思います。(代表理事・奥野慧)
 
・参考:労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2014
 

【日本の教育格差の現状についてもっと知りたいあなたへ】

毎月の活動説明会で、子どもの貧困・教育格差の現状や、CFCの活動内容等について詳しくお伝えしています。

日本の教育格差の現状や、CFCの活動をより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

CFC活動説明会詳細