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どういった子どもを支援すべきか?-大学進学ではなく、高校卒業後の就職を目指す男子高校生-

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CFC関西では、毎年クーポン利用者を決定するために、書面での審査に加え、面接も実施しています。今年度も、実に様々な背景をもつ子どもたちが、クーポンを利用してやりたいこと、自分が目指す将来像を思い思いに話してくれました。その中で僕が最も印象に残っているのが、発達障がいのある18歳の男の子です。

◆大学進学ではなく、いち早い自立を目指す高校生

彼は母子家庭で育ち、現在は通信制の高校に在籍をしていますが、他者とコミュニケーションをとることが苦手で、日によっては集中して学習することが難しいという現状があります。

そのエントリーシートには「母はもうすぐ定年となるため早く働きたい。働くためには一定の学力が必要だが通信制の高校は授業が少なく学ぶ場が必要だ。しかし障がいがあるため普通に勉強することが難しく、経済的にも苦しい。」と書かれていました。

面接でも、他の候補者たちがすぐに応えられる質問を、彼は約10秒沈黙し、熟考してから応えます。出てくる回答も明確とは言い難く、歳相応のコミュニケーションを取ることができません。しかし、彼が語るビジョンは、他の誰よりも具体的かつ等身大で、将来自立するためには、今学ぶ機会が必要だということが強く伝わってきました。

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彼は、自分の障がいやそれによって生じる様々な障壁をしっかりと認識しており、全日制の高校より通信制で学び、空いた時間でアルバイトをして社会で働く訓練をしていく道を選んでいました。そして、学校での学習時間が少ない分を学校外教育で補完し、一定の学力をつける必要性も認識しています。

また卒業後はフォークリフトの資格をとり、同様の障がいをもつ方が働いている実績がある職に就こうと考えています。母が高齢かつ精神疾患があるため、高等教育機関への進学よりもいち早い自立を目指すという動機も納得できるものがありました。

◆どちらの子どもを優先するか?

今までのCFC西日本では、どちらかと言えばコミュニケーションがしっかりとれ、クーポンをより活用してくれそうな子どもを選び、支援をしてきました。彼らは将来の夢や目標が明確で、クーポン利用先が決まっているという特徴がありますが、裏を返せば支援がなく、夢や目標が叶えられなくても、将来経済的に自立できる能力はあるのではないか?という考え方もあります。

一方、彼のようにクーポンを継続して利用することが難しいかもしれないというリスクはあるものの、将来自立するためには支援が不可欠ではないか?と感じる子どももいます。

この比較は極端な例かもしれませんが、経済状況が同程度で学年も同じ場合、どちらの子を選択するかを判断しなければならないのが僕たちの大切な仕事のひとつです。

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◆7事業年度目の新たなテーマ

CFCは今年の6月で法人設立から5年を迎えましたが、設立母体のブレーンヒューマニティーで事業が発足してからは7年となります。7事業年度目の今年度は、今までの活動実績を棚卸しし、CFCとしての方針を再度検討しつつ、次年度以降の事業立案に活かしていく年と位置づけました。今までいただいたたくさんの声や上記のような子どもたちの状況をしっかりと分析し、選考基準の設定や支援の方針を決めていきたいと思います。(代表理事・奥野)

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