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反貧困―「すべり台社会」からの脱出(書籍紹介)

親子

なぜ貧困は個人ではなく社会の問題なのか?

貧困は自己責任ではないと訴える著書は多いが、本著はその理由を日本の社会システムを紐解きながら明確に教えてくれます。しかし本著は、概念的で難解な貧困論ではなく、かと言ってリアルな貧困の実情を語っているわけでもありません。私たちが生きる社会のことを教えてくれる。それが本著の特徴です。

◆「選択できる自由」

著者はすべり台社会というメタファーを使っていますが、本著を読むと私たちの社会にあるシステムにどのような問題があるのか、そしてそれはなぜ問題なのか、そのことがよくわかります。人は貧困を語る時、言葉のイメージからか、世界の貧困のイメージからか、「かわいそう、大変そう」という感情的な面が先行します。しかし本著では、その感情論こそも貧困の要因が社会の側にあることを見落とす(見えにくくする)要因になっていると語ります。

そして社会の側に責任があるのだから、社会を構成する私たち市民一人ひとりが変えていかなければ、変わることはありません。副題にある「すべり台社会からの脱出」とは、貧困状態にある方の脱出ではなく、そのような方を生んでしまう社会そのものの変革を訴えるメッセージなのだと読み解くことができます。

最後に、本著でも引用しているノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センの貧困の定義を紹介します。

「貧困は単に所得の低さというよりも、基本的な潜在能力が奪われた状態と見なければならない」

では、潜在能力とは何か? センは「選択できる自由」だと語ります。

本著では、この基本的な選択の自由が保障されていない社会の現状を伝えています。私たちが住む社会のことをもっと知りたい方、そこに確かにある、「貧困」という問題を考えてみたい方…そんな方々にオススメの1冊です!(奥野慧・代表理事)

▼本の詳細
・「反貧困―「すべり台社会」からの脱出」(2008年4月、岩波書店)

・著者:湯浅 誠(ゆあさ まこと)
1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1995年より野宿者(ホームレス)支援活動を行う。現在、反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長他。

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