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進学格差-深刻化する教育費負担(書籍紹介)

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先日、バウチャー利用者から大学合格の連絡をもらいました。無事、第一志望の国立大学に合格したということで、とても嬉しい報告でした。今年度はCFC全体で34名が高等教育機関への進学や就職をすることとなりますが、今回は、そんな大学等への進学について書かれた本を紹介します。

やっぱり最近は「貧困」とか「格差」という言葉に敏感で、自然とそんな本を手にしてしまいます。でも僕らのような仕事をしていない方でも自分の子どもの教育費や大学進学のことは大きな問題になってくるのではないでしょうか。そんな意味でも是非手にとっていただきたい1冊です。

◆「教育を考える上で最も重要なことは、教育機会の均等と進学意欲のある者が無理なく進学できること」

本著の特長は何と言ってもそのデータ量と緻密な分析にあります。大学進学の費用はもちろん、各国の奨学金制度や教育費負担等の大量のデータが用いられ、論が展開されています。特に僕が興味をもったのは、「子どもの進路に対する親の希望と教育費負担」という調査。ここでは、所得階層別、ジェンダー別、成績別などで進学希望調査を行っています。その中で特に興味深い結果が2つあります。ひとつは、中学3年時点での成績上位層は、大学等への進学希望率が高く、実際に進学率も高い。ふたつ目は、「経済的ゆとりがあれば」という条件下では、40%弱の親が子どもの進路希望を変更する。

このような調査から、著者は、親の進路希望を規定する大きな要因は子どもの学力と家計の経済力であると論じています。しかし、著者が本著で最も伝えたいこと、それはあとがきにある文章から感じることができます。

「教育機会の均等、すなわち進学の意欲と能力のある者がすべて無理なく進学できることは、教育を考える上で最重要な理念のひとつである。」

CFCとしては非常に共感する考え方です。著者は、自分自身が三つの奨学金をもらって進学、卒業した経緯を持ち、教授の薦めから奨学金研究を始めます。そして、「私たちの世代は『無理する家計』として子どもの教育費を何とか負担してきた。しかしこの無理はもう続かない。何とかしたい」そんな想いを綴っています。

僕たちCFCの活動は、高等教育機関への進学や就職までの支援です。ただ、CFCの支援を受けた子どもたちの今後を考える上では、大学進学に係る費用や大学の授業料などなど…子どもが将来自立するまでの過程に存在する様々な課題もセットで考えていかなければならないのかもしれません。皆さんもぜひ、「大学の教育費」という、著者曰く「人生で2番目に高い買い物」について考えてみてください。(奥野慧・代表理事)

▼本の詳細
・「進学格差-深刻化する教育費負担」(2008年12月、筑摩書房)

・著者:小林 雅之

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