ニュース

弱者の居場所がない社会――貧困・格差と社会的包摂(書籍紹介)

親子

日本では、2008年頃から「子どもの貧困」という問題が注目され始めましたが、その火付け役となったのが阿部彩さんの前著『子どもの貧困――日本の不公平を考える』です。

日本の貧困研究の有力者の一人である阿部彩さんが「子どもの貧困」から少し視野を広げ、日本の貧困問題全般について論じていますので、今回はこの本を紹介したいと思います!

◆尊厳をもって生きていくうえで大切なこと

著者は、人が尊厳をもって生きていくうえで大切なことは、人とつながること、自分の役割があること、居場所があることだと主張しています。そして、それらは会社、家族、町内会、私的なグループやクラブなど、いくつもの小さな社会に身をおいて生きていく中で得ることができるといいます。

日本では、貧困状態に陥ると、単に生きるための資源(お金や所有物)を失うだけでなく、人として生きていくうえで重要な「人とのつながり」「役割」「居場所」を失い、社会的から排除されていく構造になっていると著者は指摘します。

◆豊かさとは、モノの豊かさなのか、精神的な豊かさなのか

また、本著は「そもそも貧困とは何か?」という本質的な部分にも触れています。私が特に共感したのは、「本当の豊かさとは、モノの多寡によって決められるのではなく、精神的に豊かな生活のことだ」という一般論に対する、以下の著者の意見です。

現実問題として、私たちは物質主義の中に生きている。幼いうちから競争にさらされ、勝ち負けのレッテルを張られ、勝った者にはモノとおカネという報酬が与えられ、負けた者は経済的貧困に陥る世界に当面は生きていくしかない。そして、この社会に生きていく以上、経済的貧困は精神的貧困の最大の要因になるのである

この意見には、私も強く賛同します。CFCが取り組む問題のさらに根底にある「日本の貧困・格差の問題」についてより深く考えるきっかけになると思います。是非お読みください!(今井悠介・代表理事)

▼本の詳細
・阿部彩(2011)「弱者の居場所がない社会――貧困・格差と社会的包摂」講談社。

・著者について:阿部 彩
マサチューセッツ工科大学卒業。タフツ大学フレッシャー法律外交大学院修士号・博士号取得。国際連合、海外経済協力基金を経て、1999年より、国立社会保障・人口問題研究所に所属。現在、同研究所社会保障応用分析研究部長。研究テーマは、貧困・社会的排除、公的扶助論、社会保障論。

【日本の教育格差の現状についてもっと知りたいあなたへ】

毎月の活動説明会で、子どもの貧困・教育格差の現状や、CFCの活動内容等について詳しくお伝えしています。

日本の教育格差の現状や、CFCの活動をより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

CFC活動説明会詳細