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生活保護の謎(書籍紹介)

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題名の通りですが、確かに生活保護に関する情報は少なく、それゆえ謎が多いのが実状です。本著は、そんな僕たち一般市民が正しく理解できていない生活保護制度の実態をわかりやすく伝えています。例えば、「仕事をしていても生活保護は受けられる?」、「生活保護受給者は車をもってはいけない?」など、一般的な疑問に対して、実例を交えながら解説をする構成で論が展開されています。

◆「今の生活保護という制度は、国の助けが欲しい者にとっては不便な制度」

また、著者は元官僚という立場から、本著を通してこの制度に対して批判的な見解を述べています。しかしそれは、不正受給に対するもののように限定的な意見ではなく、制度全体、更には社会保障全体に対する意見で、概ね納得できる内容です。また、不正受給の問題についても、見過ごすことはできないとしつつも、約700万人いるとされる、生活保護要件を満たしながら受給から漏れている人たちへの対応を優先することを強調しています。2012年時点の生活保護受給者は約210万人のため、実はほとんどの人がこの制度から漏れている実状があります。

著者は、そんな生活保護制度のひずみをこう表現しています。

「今の生活保護という制度は、これを騙し取ろうと思っている者にとっては非常に便利で、本当に困っていて国の助けが欲しい者にとっては非常に不便な制度である」

言葉自体は強烈ですが、本制度の問題を正しく捉えた表現だと感じます。

本著でも述べられているように、日本の生活保護費はアメリカの1割程度という現状があります。昨今は生活保護費の削減が強調されていますが、ある一部分の問題だけではなく、社会保障全体とセットで考えていく重要性を本著は教えてくれます。(奥野慧・代表理事)

▼本の詳細
・「生活保護の謎」(2012年8月、祥伝社)

・著者:武田 知弘

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