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ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所(書籍紹介)

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著者は、CFCと同問題に取り組む我々の大先輩で、先日お会いした際にもいくつかの重要な気づきを与えてくれました。本著もまた、「高校中退という現象」を通して、その裏側にある子どもの貧困やその問題への取り組みについて重要な示唆を与えてくれる作品です。

◆「貧しいとは人生を選べないこと」

本著の特徴は、著者自身による1年以上に渡る当事者へのインタビューを中心に構成されている点です。例えば第一部の第二章は、『孝(20歳)-高校を中退したら仕事がなかった』、『亜矢(18歳)-父も母も私もみんな中退』などのように13名の事例がずらっと並びます。これによって私たち読み手は、なかなかイメージしにくい高校中退者や貧困家庭をリアリティをもって感じることができます。著者は冒頭で、本著の役割は貧困の実態を伝えることだが、それ以上に「低層に沈んでいる若者たちの嘆き、うめき、悲しみ、なかなか聞こえてこない助けを求める声を彼らに代わって社会に伝えること」だと言っています。この章を読むだけでもそんな著者の想いが伝わってきます。

そして、第三章や第二部以降は、高校中退の背景を探っていきます。ここでも著者はデータだけでなく、当事者や関係者へのインタビューを行い、生の声を伝えることにこだわっています。特に高校中退の背景を求めて保育所や障害児通園施設にヒアリングに行っているのは驚きですが、保育士などへのヒアリング結果を読めば、著者が中退の背景を幼児期に求めたことは頷けます。ただ、保育士の言葉にあるように「問題を抱えた家庭や貧困家庭の子どもほど保育所に来ない」ということを考えると、どのように地域で連携して子どもを育てていくのかは今後の課題であるように感じます。

最後に、この種の著書は得てして問題提起で終わるものが多いですが、流石に実践者である著者は、終わりに4つの具体的な提案を行い、この問題への解決策を提示しています。そして結びには、インタビューに登場した母子家庭の母親の言葉を再度紹介しています。

「貧しいとは人生を選べないこと」

現実は彼女の言葉の通りなのだと思います。ただ本著は、その現状だけではなく、私たちの想像力と行動力によっては、彼女らに選択肢を作っていけることを教えてくれます。(奥野慧・代表理事)

▼本の詳細
・「ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所」(2009年10月、筑摩書房)

・著者:青砥 恭
1948年松江市生まれ。明治大学法学部卒業。元埼玉県立高校教諭。現在、居場所のない若者を支援するNPO法人さいたまユースサポートネット代表。また、明治大学や埼玉大学で非常勤講師を務める。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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