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日本の教育格差(書籍紹介)

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先日、厚生労働省が日本の所得格差が過去最高となったことを発表しましたが、今回は所得格差によって生まれる教育格差をテーマにした本をご紹介します。

本書の一番の特徴は、「教育」の問題を「経済学」の視点から論じる点にあります。格差問題の第一人者である著者が、豊富なデータや先行事例から、所得格差によって生まれる教育格差の実態を検証し、その打開策を提示しています。

◆「地域の教育格差(学力格差)は、むしろ東京や大阪といった大都市の中に存在する」

私が読んでいて一番印象深かったのは、教育の地域間格差についてです。イメージとしては、例えば東京・大阪のような大都市と、地方の都道府県では所得も違いますし、大きな教育格差も生まれていそうですが、それは過去の話だそうです。かつて(1960年代頃まで)は地域間で大きな学力差が生まれていました。しかしながら文部科学省が様々な政策措置を行った結果、この地域間格差はかなり解消したとのことです。

例えば都道府県による教育費の格差を小さくするために「義務教育費国庫負担制度(市町村立学校の教職員の人件費を都道府県の負担とした上で、国が都道府県の実支出額の原則3分の1を負担する制度)を導入したり、優秀な教員をへき地に派遣したりしました。

もちろん、完全に地域間の格差が解消したわけではありませんし、これからも様々な施策を講じる必要はあると思います。ただ、たしかに全国学力テストの結果を見ても、裕福な県でも学力の低いところ(大阪府や福岡県)もあれば、大都市と比較すると裕福ではない県でも学力が高いところ(秋田県や青森県)があるのも事実です。こういったことは1960年代ではありませんでした。

そして、著者が強く指摘するのは、「地域の教育格差(学力格差)は、むしろ東京や大阪といった大都市の中に存在する」ということです。これらの大都市には、深刻な貧困問題を抱えた地域があり、そこに住む子どもの学力が非常に低くなる傾向にあります。

例えば、昨年大阪市が学校外教育バウチャー事業を試行実施した大阪市西成区では中学生の就学援助率が約50%と、全国平均の16%を大幅に上回っています。また、東京23区でも同様の問題を抱えています。東京23区内には、就学援助率が40%を超える地域が複数存在しており、これらの地域は総じて学力が低いという結果が出ています(東京が抱える課題に対しては、CFCとしても来年度中に取り組くんでいく予定です)。

本書では、このような地域間の教育格差の問題だけでなく、親の階層が子どもの教育達成度(学力や学歴)に与える影響、日本の教育費負担に関する問題等、かなり多面的に日本の教育格差の問題を取り上げています。是非、お読みください!(今井悠介・代表理事)

▼本の詳細
・「日本の教育格差」(2010年7月、岩波書店)

・著者:橘木 俊詔
1943年兵庫県に生まれる。同志社大学経済学部教授。小樽商科大学、大阪大学大学院を経て、1973年ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。その後、米、仏、英、独の大学・研究所で教育職・研究職を歴任。京都大学大学院経済学研究科教授、経済企画庁客員主任研究官、日本銀行客員研究員、経済産業省ファカルティフェローなどを経て現職。2005年度日本経済学会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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