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子どもの貧困Ⅱ-解決策を考える(書籍紹介)

親子

本著は書籍名に「Ⅱ」と入っている通り、「子どもの貧困-日本の不公平を考える」の続編です。

前著から5年の月日が過ぎ、子どもの貧困という言葉が広く知られるようになった今、著者は前著でのスタンス「子どもの貧困問題を知ってもらう」から「子どもの貧困問題を解決する」というスタンスで本著を執筆しています。

◆重要なのはそれぞれのメリットを残して社会にフィットする政策をカスタムメイドし実行すること

前著は子どもの貧困に関する概念的な話やマクロデータを用いた丁寧な解説が特徴であり、一言で言うと「子どもの貧困の解説書」と言えるものでした。しかし、これに対して本著を一言で言うと「子どもの貧困政策提言書」と言えるのではないかと思います。

序章から2章までは、子どもの貧困の現状・貧困を招く要因について前著の内容をおさらいするような形で分かりやすく解説されています。そして3章以降では、実効力のある政策を考えていく上での重要な視点や考え方を豊富な知見を元に展開していきます。

まず、3章の冒頭部分で非常に印象的なのが、著者がおもいつく限りの政策を列挙したページです。見開き1ページにぎっしりとありとあらゆる政策案が並べられています。そしてここからは、いかにして社会に存在する制約(国の予算・問題の規模感等)の中で、膨大にある政策案を選定・実行するのかを論じていきます。

そして、著者が特に子どもの貧困政策の選定・実行をしていく上で重要な視点として挙げているのが「対象者の選定」です。対象者を選定する際の大きな考え方の枠組みは「普遍主義」と「選別主義」だと言います。

普遍主義とは、すべての子どもが当然に与えられる権利として受け取ることができるもの。分かりやすい例でいうと義務教育がこれに該当します。すべての子どもに保障され公平である一方、政策を実施するコストが高くなるというデメリットもあります。これに対して選別主義とは、貧困であるかどうか基準を定めて選定し、該当者のみが支援を受けられるというものです。分かりやすい例でいうと就学援助や生活保護といったものが挙げられます。支援が必要な子どもに手厚く効率的に支援を届けられるというメリットがある一方で、選別コスト高や漏給、社会的排除を生みやすい等のデメリットも存在します。それぞれにはメリットとデメリットがあり、白黒をつけることはできず、重要なことはそれぞれのメリットをうまく残してその社会にフィットするよう政策をカスタムメイドし実行していくことだと著者は主張しています。

本著は単に理想を語るだけではなく現実の問題や課題をしっかりと捉えた上で実効性のある政策を考えていくために必要な視点や考え方を与えてくれます。

子どもの貧困問題について「知る」だけではなく、それをどうすれば「解決」できるのか。それを知りたい方にとっては必読書になると思います。(雑賀雄太・仙台事務局長)

▼本の詳細
・「子どもの貧困Ⅱ-解決策を考える」(2014年1月、岩波書店)

・著者:阿部 彩
マサチューセッツ工科大学卒業。タフツ大学フレッチャー法律外交大学院修士号・博士号取得。国際連合、海外経済協力基金を経て、1999年、国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長に就任、現在は同研究所社会保障応用分析研究部部長。2011~13年、内閣官房社会的包摂推進室企画官(併任)。そのほか、厚生労働省社会保障審議会臨時委員(生活保護基準部会)、国家戦略室フロンティア分科会幸福のフロンティア部会長、内閣府男女共同参画会議専門委員などを歴任。

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