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チャイルド・プア 社会を蝕む子どもの貧困(書籍紹介)

親子

本書は2012年10月19日に放送された「チャイルド・プア~急増苦しむ子どもたち~」という番組を書籍化した一冊です。本書では6人に1人の子どもが貧困状態にあり、さらに悪化していく「子どもの貧困」について、3人の子どもたちの実例をもとに、「子どもの貧困」の現状と課題、将来への取り組みを描いています。

◆貧困であることを当然のように受け入れ、それが仕方がないことだと考えている現実

特に印象深かったのが、「路上生活を2年間強いられ学力が大幅に遅れてしまった中学生」のエピソードです。この子どもは、他の子どもたちと変わらぬ生活を過ごしていたが、ある日突然親の借金が原因で全国を転々とする生活が始まりました。その結果、彼は小学6年生からの1年半、学校に通うことができないまま生活をしていました。彼は今、中学2年生のクラスに転入したのですが、周囲に溶け込むことができず不登校となっています。

彼の事例に関わらず、親の経済状況が原因で、ある日突然生活が一転し、今までとは全く異なった生活を過ごしている子どもたちが多くいます。日本において、貧困とは海外の話だというイメージがまだまだあると思います。しかし、実際は私たちと同じ日本に外的な要因によって十分な教育が受けることができないまま社会に放り出され、貧困から抜け出せなくなった子どもたちが存在します。それは、遠い海外での話ではなく、私たちのすぐ近くで起こっていることなのだと本書を通して改めて考えさせられました。

また、一番驚いたことが、本書に登場する子どもたちの多くがその貧困であることを当然のように受け入れ、それが仕方がないことだと考えていることです。確かに子どもたちにとってその事実はどうすることもできないかもしれません。しかし、親以外の周りの大人がその状況に気づき、子どもたちに寄り添い支えていくことはできると感じました。身近な学校の先生や地域のコミュニティの充実が「子どもの貧困」に気づく第一歩なのかもしれません。

今回、本書に出てきた子どもたちは幸運にも自分たちの近くに「子どもの貧困」を理解し、寄り添ってくれる大人の存在がありました。彼らは現在、NPOやスクールカウンセラーの方々の支援により、目標を持ち生活しています。しかし、彼らは氷山の一角であり、まだまだ日本には「子どもの貧困」という問題が隠れています。私たちはこれからその問題をしっかりと見つめ、自分たちができることを考えていく必要があると思います。本書は、実在する子どもたちを事例に「子どもの貧困」問題の今を知ることができる、オススメの一冊です。

▼本の詳細
・「チャイルド・プア 社会を蝕む子どもの貧困」(2014年3月、ティー・オーエンタテインメント)

・著者:新井 直之(NHK報道番組ディレクター)
1982年埼玉県生まれ。2005年NHK入局。仙台放送局を経て、2010年から「おはよう日本」でニュース企画や震災関連の特集を担当。2012年から「特報首都圏」でドキュメンタリーを始めとする報道番組を企画作成。主な担当番組は、ハイビジョンふるさと発「昔話が消えてゆく~東北の村を訪ねて50年~」(2007年)、「求むおらほの”なかま”~宮城・鬼首山学校の奮闘~」(2010年)、特報首都圏「チャイルド・プア~急増苦しむ子どもたち~」(2012年)、地方発ドキュメンタリー「逆境を生き抜け~急増”チャイルド・プア"闘う現場~」(2013年)、小さな旅「雷さまの慈雨から栃木県下野町~」(2013年)、NHKスペシャル「台風連続襲来”記録的豪雨”はなぜ?」など。

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