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教育格差の社会学(書籍紹介)

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今回は「教育格差」という社会問題の「教科書」ともいえる本をご紹介します。著者は、全国学力調査の結果分析を行うこと等で知られる教育社会学者の耳塚寛明先生(お茶の水女子大学副学長)です。

本著には、学力格差をはじめとした様々な格差の実態、教育機会や雇用機会が生み出されるメカニズム、これらの課題に対する各施策の有効性と脆弱さ等が、様々な研究データに基づいて記されていますが、特別な専門知識がなくても読みやすい内容で、まさに教科書だといえます。

◆子どもの学力を形成するうえで重要な3つの要素

個人的には、その中でも「学力形成を決定づける要素に『地域差』が存在する」という先行研究の事例は興味深いものでしたので、簡単にご紹介します。

人口25万人の関東地方の大都市近郊中都市(=Aエリア)と、人口9万人の東北地方小都市(=Cエリア)において、小学6年生の算数学力を規定する要因を分析しました。

Aエリア(人口25万人の大都市近郊中都市)では、(1)受験塾への通塾、(2)家での学習時間が長いこと、(3)父親が大卒であることの3点が、子どもの学力を引き上げる強い要因になっていることがわかりました。

一方、Cエリア(人口9万人の小都市)においては、家庭での学習時間と父親の学歴が学力を高めるうえで重要な要素となることは共通していた一方、受験塾への通塾行動は、学力向上の決定的な要因にはならなかったそうです。

これらの結果から、CFCではこれまであまり地域環境の差異には着目してきませんでしたが、もしかすると今後はそのような視点も必要になってくるのではないかと感じました。

ただ、やはり日本全体でみると、子どもの学力を形成するうえで重要な要素としては、第一に「学校外教育支出」、第二に「保護者の学歴期待」、第三に「世帯所得」の三つがあげられるようです。

最後に、実は「教育格差」という言葉は、学術的な専門用語ではなく、きちんとした定義は存在しません。著者は、教育格差という言葉は、ある種の「流行語」だと言っています。しかしながら、現段階では曖昧な流行語に過ぎない「教育格差」という言葉は、今後学問的にも社会的にも一定の意味を与えられるようになる可能性があるとのことです。

この問題を理解することは、教育だけの問題に限らず、これからの社会のあり方を考えていくうえで、非常に重要な要素になると思います。「教育格差」の問題を体系的に知りたい方には、おすすめの一冊です。

▼本の詳細
・「教育格差の社会学」(2014年1月、有斐閣)

・著者:耳塚 寛明
1953年長野県生まれ。お茶の水女子大学副学長。専門は教育社会学。共著に『多様化と個性化の潮流をさぐる―高校教育改革の比較教育社会学』『変わる若者と職業世界―卜ランジッションの社会学』『学力と卜ランジッションの危機―閉ざされた大人への道』など。

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