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無業社会 働くことができない若者たちの未来(書籍紹介)

キャリア

今回は「若年無業者問題」という社会問題について書かれている本をご紹介します。著者はNPO法人「育て上げネット」理事長の工藤さんと立命館大学大学院准教授の西田先生です。

本著は、働くことが出来ない若者たちのケース事例や実態調査の結果を踏まえながら、若年無業者問題が決して自己責任論では片づけられない問題だという事を示しています。私からは若年無業者の誤解に関する部分と、この問題を放置すると日本はどうなってしまうのかご紹介します。

◆若年無業者の問題は必ずしも本人の怠惰からくる問題ではない

まず、「若年無業者」の定義ですが一般的には内閣府や厚生労働省の「15~34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者」という意味で使われることが多いそうです。

ニートやフリーターという言葉も近い意味で使われていますが、皆さんは彼らに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?

世間では「働くことが出来ない若者は怠けている」という風潮がありますが、本著ではまず、これは誤解だと述べています。

著者が行った調査では若年無業者の75.5%がなんらかの就労経験があり、内閣府の「平成25年版子ども・若者白書」では若年労働者が求職活動をしていない、就業を希望しない理由の最も多い回答が「病気やけがのため」としています。

つまり、若年無業者は必ずしも怠惰の帰結ではないことがわかります。
また怪我や病気以外でも、本人だけの問題ではない理由で就業できないケースが多くあることも本著では紹介されています。

また、若年無業者の問題を放置してしまうと日本社会は今後どうなってしまうのか、本著では興味深い試算が紹介されています。
それは、若年無業者が25歳から65歳まで生活保護を受給し続けた場合と、就労を通じて納税主体に転じた場合の社会が負担するコストのギャップです。

細かい計算式は割愛しますが、両者の間には約1億5000万円のギャップが生じると示されています。当然、それらのコストギャップは社会保障費の増大につながり、我々国民が負担する形になります。

若年無業者の問題は必ずしも本人の怠惰からくる問題ではない、この問題を放置することは日本社会全体にとっても有益でないことを簡単にご説明しました。

これはCFCが取り組む子どもの貧困問題にも同じことが言えると思います。
突然の天災や、親の失職など本人が望まない理由で社会的に困難な状況に陥ることは、誰にでも起き得る事象です。

私たちに出来る最初の一歩は、こういった社会課題一つひとつに向き合うことではないでしょうか。

繰り返しにはなってしまいますが、無業状態や貧困状態は誰にでも起こりうる決して他人事ではない、ということがイメージできる本だと思い、今回ご紹介させていただきました。
ぜひご一読ください。

▼本の詳細
・「無業社会 働くことができない若者たちの未来」(2014年8月、朝日新聞出版)

・著者:工藤 啓、西田 亮介
○工藤 啓
1977年東京生まれ。成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科を中退後、渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーターなど無業の若者の就労支援団体、育て上げネットを設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員、厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、立川市教育委員会立川市学校評議員等を歴任。
○西田亮介
1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。同大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、(独)中小機構経営支援情報センターリサーチャー、東洋大学、学習院大学、デジタルハリウッド大学大学院非常勤講師等を経て、現在は立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授。

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