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ルポ 虐待の連鎖は止められるか(書籍紹介)

親子

児童相談所での児童虐待の相談件数は10年前に比べて倍近くに増えているそうです。これは2000年に児童虐待防止法が施行され、メディアでの事件の露出や社会的な虐待への認識が高まってきたからと言われています。

本著は、虐待事件を共同通信の記者の方が取材し実例をまとめた1冊です。本著では虐待の連鎖や身体への暴力、ネグレクト、産み捨て、虐待を受けた子どもを育てる里親などの事例を1章ごとに紹介し、虐待する親の心理や社会的な背景などにも言及しています。

◆虐待を受けて育ったAさんの事例

本著の第1章で紹介されているAさんは、幼少期に母親からネグレクトを受け、父親から日常的な虐待を受けていました。実の母はその後失踪し、再婚した継母からもネグレクトを受けて育ちました。

その後、Aさんは結婚し出産を経験します。しかし、虐待しか子育てのお手本を知らない彼女は、1歳の我が子に対し手を挙げてしまいます。

その数ヶ月後、彼女は虐待に悩む親の回復支援プログラムに参加します。彼女はそのプログラムで、自分のありのままが尊重される環境にはじめて身を置き、自分自身が変わらなければ親子の関係も変わらないと悟ったそうです。彼女は自分を大切にしてくれるパートナーに出会い、自分を変えるプログラムに出会ったことで「虐待の連鎖」から脱しました。

◆虐待に至る原因とは何か

本著では親が虐待に至るいくつかの原因が紹介されています。その原因は、先述した事例のように虐待というお手本しかなかったり、経済的な問題であったりと様々ですが、筆者は本著で「子どもに失敗を許さない社会の空気」も虐待に大きく関係しているのではないかと述べています。

初めて子育てをする若い夫婦は、失敗が許容されにくい社会で間違った育児をしてはならないという無言のプレッシャーを感じ、周囲を頼れず家庭内で問題を抱え込み、子どもへの暴力に結びついてしまうと述べており、無謬性の幻想から抜け出すことの必要性を説いています。

本著は、最終章で虐待された子どもを里親として引取り育てている方の事例を紹介しています。筆者は最後に「虐待の過去を背負っていたとしても、本気で向き合ってくれる相手と出会ったとき、人は変わることができる。」と述べており、多くの大人が本気で子どもと関わっていくことが大切だと述べています。

本著でも触れられているように、家庭の経済的な問題と虐待は大きく関連しています。私たちが関わっている子どもたちもこのような環境に置かれている可能性もあります。子どもとのつながりを大切にし、支援していく必要性を再認識することができました。本著は虐待の現実とそれに真摯に向き合う大人たちを知ることができる、おすすめの1冊です。

▼本の詳細
・共同通信「虐待」取材班(2014)「ルポ 虐待の連鎖は止められるか」岩波ブックレット。

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