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被災弱者(書籍紹介)

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今月で東日本大震災発生から丸4年が経過しましたが、復興庁の調べでは、震災3日後の避難者数約47万人のうち、約半数が今も仮設住宅や親戚宅等での避難生活を余儀なくされています。(2014年11月時点)

当然、時間の経過と共に被災地のことを耳にする機会は減少していきますが、ぜひ今月だけでも、被災地のことについて考える時間をとってもらえればと思います。そんな3月に皆さんにご覧いただきたいのが、先月発売となった「被災弱者」です。

◆見落としがちな問題や「被災弱者」の存在

本著の特徴は、題名のとおり「弱者」を取り上げている点にあります。ここで言う「弱者」とは、一般的な子どもや高齢者を指しているのではなく、制度の狭間にあり支援が手薄な方や、既存の行政サービスや支援活動では見落とされがちな方々を表しています。

著者は、その1つが「みなし仮設(民間賃貸仮設住宅)」の入居者だと言います。東日本大震災は、このみなし仮設が初めて全面的に活用された大規模災害で、過去の震災ではあまり経験のない問題が発生しています。

みなし仮設は、元々あった賃貸住宅の空き家(部屋)を活用しているため、即入居可能な点や新たに住宅を建てる費用が掛からないコスト面のメリットがあります。一方プレハブ仮設は、集会場や談話室が設けられて住民同士の交流があったり、全国から支援物資が届いたりという面がありますが、みなし仮設にこれらの支援はありません。また、みなし仮設の場合は、全国に被災者が分散することになるため、行政の支援が行き届かないという問題や、見知らぬ土地で被災者が孤立したり、ボランティアの接触が困難という課題もあります。

もちろん、プレハブ仮設にはそれ特有の問題があるため、どちらがより悲惨な状況にあるとは言えませんが、一見すると我々は、プレハブ仮設の方がより深刻な状況にあると錯覚してしまいがちです。本著は、このような我々が見落としがちな問題や「被災弱者」の存在を教えてくれます。

当法人のアドバイザーである、(一財)ダイバーシティ研究所代表理事の田村太郎さんは、「被災地を見ることは10年後の日本を見ること」だといいます。多くの課題が顕在化している被災地は、現在の日本が潜在的に抱える課題を教えてくれます。その意味でも「被災弱者」を知ることは、我々のこれからにとって必要なことだと感じます。

ぜひ皆さんも本著を手に取り、被災地や自分の地域の将来について考えてみてください。

▼本の詳細
・「被災弱者」(2015年2月、岩波書店)

・著者:岡田 広行
1966年10月生まれ。早稲田大学卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、会社四季報編集部、週刊東洋経済編集部などを経て、現在、企業情報部記者として、ノンバンク・リース業界を担当。以前から社会保障分野の取材に力を入れており、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材と執筆を続けている。

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