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最貧困女子(書籍紹介)

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今回私が紹介するのは貧困状態にある少女たちの話です。筆者はルポライターの鈴木大介さん。裏社会や触法少年少女など、社会の裏側にいる人々の当事者取材をされている方です。

読んでいて伝わってくるのは彼の無力感。正直、私自身もこの本を読んで、同様の思いを抱きました。貧困状態の子どもたちと一括りに言ってもその状況は様々で、タイトルにもある通りこの本に登場してくる少女たちはその中でもかなり苦しい状況に置かれている人たちです。

彼が取材を通して出会った少女たちの実態が生々しく描かれており、「最貧困女子はセックスワークの底にいる」、これが本当に日本なのかと疑われる方もいるかと思いますが、実際に今も日本で起きている問題から目を背けたくないという思いで今回紹介させてもらいました。

◆「貧困」と「貧乏」の違い

本著の冒頭で、筆者は昨今よく聞くようになった「貧困女子」というキーワード、そしてその当事者たちに対して向けられる社会の目に強い違和感を感じると言っています。最近ではNHKなどの放送メディアでも困難な状況に置かれている人々の実態が流れるようになってきましたが、未だに自己責任論は強く残っています。その原因は、我々がまだこの問題を正しく把握できていないから。もしかしたら「貧困」という言葉で一括りにしてしまっているのも誤解を招く要因なのかもしれません。

まず、整理しなくてはいけないのは「貧困」と「貧乏」の違いです。事例として登場する2人の女性は共に年収125万円前後。同じ低所得に位置付けられますが、一方の女性は「貧乏」(低所得)ではあるが「貧困」(貧しくて困っている)ではなく、とても充実している生活を送っていると書かれています。その違いを生み出している要因の一つは地域の縁です。私も田舎生まれなのでイメージできるのですが、田舎でヤンキーと呼ばれる人たちの生活満足度は低所得であっても割と高いケースが多いです。それは、グループや友人の縁が強いからで、様々な情報やモノをシェアすることで所得には表れない高い生活満足度を得ていると述べられています。

しかし、その一方でそういった地域の縁から抜け出してしまった少女たちはかなり苦しい状況に追い込まれます。家出同然で上京し、誰も頼る人がいない中でネットカフェ難民や 若年ホームレスになっていく。彼女たちは、家族や地域の縁だけでなく、社会保障からも切り離されていきます。(住所がない。もしくはそもそも手続きの仕方を知らない、教えてくれる人もいない。)そして、精神的にも極度に不安定になっていき単なる低所得状態から「貧困」状態に陥っていきます。

そして、その「貧困女子」よりも更に深刻な状況に置かれているのが「最貧困女子」です。先に述べたようにセックスワークの底にそう呼ばれている女性たちがいます。かなり、過激な表現(それが現実なのですが)で描かれているのでメルマガの中での紹介は控えますが、彼女たちは人権を無視した酷い扱いを受けています。ただ、なぜそこまでしてセックスワークを続けなくてはいけないのか?やめればいいじゃないか?そんな声もあるかもしれませんが、ここに登場してくる女性たちの話を読むと決してそのような考えは出来なくなると思います。

困難な状態にある女性たちの実態がリアルに描かれているだけでなく、その背景やなぜ彼女たちにとってセックスワークがセーフティーネット代わりになってしまっているのか、目を通していただければわかるかと思います。どなたにもお勧めできる本ではないのかもしれませんが、現実を直視しなければいけないと言う意味でご紹介しました。(鈴木平・シニアマネージャー)

▼本の詳細
・「最貧困女子」(2014年9月、幻冬舎)

・著者:鈴木 大介
1973年千葉県生まれ。「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心とした取材活動を続けるルポライター。

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