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あなたが救える命: 世界の貧困を終わらせるために今すぐできること(書籍紹介)

親子

今回は、貧困問題を解決するために、私たちはどういった行動をとるべきかを哲学者が徹底的に議論した本をご紹介します。

この本での「貧困」は、CFCが解決に取り組んでいる「相対的貧困※」ではなく、「絶対的貧困※」を指しています。とは言っても、貧困問題という点では共通しており、この本に影響を受けた友人が先日CFCのサポート会員(継続寄付会員)になってくれたという経緯もあり、今回この本を手に取ってみました。

※「相対的貧困」…社会においてほとんどの人が享受できる「普通の生活」を得ることができない状態。
「絶対的貧困」…生きるために最低限必要な衣食住が満ち足りていない状態。

◆貧困削減のための尽力は『しなかったら悪いこと』

この本の著者であるピーター・シンガーは、ザ・ニューヨーカー誌で「最も影響力のある現代の哲学者」と呼ばれ、タイム誌で「世界の最も影響力のある100人」の一人に選ばれた世界的に有名な哲学者です。この本は世界各国で翻訳・出版されるほど反響のあった本ですが、著者の主張が強烈すぎるのか、その内容には賛否が分かれているようです。

著者の主張は以下のようなものです。

・貧困を削減するために尽力することは、『してもしなくてもいいが、すれば良いこと』ではなく、『しなかったら悪いこと』である。

・例えば、小さな子どもが池で溺れているとしよう。周りには誰もいない。池は浅く、大人の自分ならば溺れることなく子どもを助けることができる。しかし、池に入れば買ったばかりの自分の靴がダメになってしまう。このような状況で、自分の靴を犠牲にして子どもを助けるということは『すればよいこと』ではなく、『しなかったら悪いこと』であると皆が言うだろう。

・貧困に対する支援についても同じことで、放っておけば子どもが死んでしまうことを知りながら、何もしないことは池で溺れている子どもを見殺しにすることと本質的に同じだ。

・つまり、自分が同じくらい重要なものを犠牲にせずに、誰かを助けられるならば、私たちはその人を助けるべきである。

この考え方は、一見短絡的なようにも思えますが、本を読んで私自身にも似た判断基準があったことに気づきました。

私はCFCで働く以前から、サポート会員としてCFCの活動を支援していました。当初CFCの活動を知り、自分が何ができるか考えた際に、私は以下のように考えました。

「私が月に1回外でランチすることを我慢して寄付をすれば、子どもが教育の機会を得て、夢に向かって前進する一助になれる。私にとって外食がそこまで意味のあることだろうか…。よし、月に1回外でランチをする代わりに毎月1000円ずつCFCに寄付をしよう。」

この考え方は、著者の功利主義的な思想に通じるものだと感じます。

この本のやや挑戦的な主張には、反感を持たれる方もいるかもしれません。実際、私も読み始めは少し面食らってしまいましたが、読み進めるほどに筆者の主張が納得できるものだと気が付く本でした。

また、筆者は寄付によって貧困問題の解決に取り組む団体を支援すべきだとしつつ、支援団体の選定については非常にシビアな目を持っています。寄付金の使途や、団体の費用対効果、数字では測りきれない成果など、支援団体を選定するポイントについては非常に参考になる本だと思います。

メルマガ会員の皆様は既に何らかの形で貧困問題の解決にむけて行動している方が多いと思いますが、問題の解決に向けて、一人ひとりができることを再考するきっかけにしていただければ、という想いも込めて、今回この本をご紹介させていただきました。(山本雅・広報チーム マネージャー)

▼本の詳細
・「あなたが救える命: 世界の貧困を終わらせるために今すぐできること」(2014年6月、勁草書房)

・著者:ピーター・シンガー
オーストラリアメルボルン出身の哲学者、倫理学者。現在、プリンストン大学教授。専門は応用倫理学。功利主義の立場から、倫理の問題を探求している。

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