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音楽教育は頭を良くする?

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先日、今年から大学に進学したクーポン利用者の卒業生と話をする機会がありました。彼は、とある国立大学の工学部に合格するほどの頭脳の持ち主なのですが、彼の話の中で印象的だったのが、「正直、ぼくはピアノがなかったらここまで頭が良くならなかったと思います」という言葉でした。

これを聞いてふと思い出したのは、かの有名なアインシュタインです。6歳からバイオリンを習っていたアインシュタインは、「相対性理論を見つけられたのは、音楽に精通していたからだ」と述べています。そのような出来事もあり、今回は音楽と「頭の良さ」の関連性について文献を調べてみました。

◆音楽は頭をよくする

トロント大学のE. Glenn Schellenberg教授は、144人の6歳児を対象に、1年間、①キーボードのレッスンを受けるグループ、②歌のレッスンを受けるグループ、そしてこれらの対象群として、③演劇のレッスンを受けるグループ、④何もレッスンを受けないグループの4グループに分け、1年後、実験の前後で子どもたちにどのような変化があるのか調査を行いました。

結果、音楽のレッスンを受けさせた①②の子どもたちは、③④の子どもたちより、有意にIQが高くなっていたことが明らかになりました。(余談ですが、演劇のレッスンを受けた子どもは、IQではなく協調性が有意に高くなったそうです。)

そのほかにも、「小学生100人を対象に日常習慣を調べたところ、ピアノを弾いている子どもはHQ(作業記憶、一般知能、自己制御、注意力等)が高い」(武蔵野学院大学・澤口俊之教授)、「2年間音楽を学んだ子どもは音を正確に聞き分ける能力が向上し、この能力は読解力や集中力に重要であり、結果学業成績がよくなった」(ノースウェスタン大学・NinaKraus教授ら)といった文献が複数出てきました。音楽が頭を良くするということは、いまや学術界でも共通認識となっているようです。

それでは、音楽によってなぜこのような変化が起きるのでしょうか。

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◆ピアノを弾くことは、脳全体を使うこと

脳科学者の澤口俊之教授(武蔵野学院大学)は、「ピアノは脳全体を使うため脳の機能を高める」とおっしゃっています。

つまり、ピアノを弾くという行為は、楽譜を見て一時的に記憶しながら、次に弾く楽譜を先読みしつつ、自分が演奏しているピアノの音を聞きながら、かつ先生から注意されたことを思い出しながら、どのくらいの強さでどの指を動かすかを考え、鍵盤の距離を捉え、ペダルを踏んで・・・という大量の情報を処理しながら、両手の指を動かすことであり、ピアノを弾くための情報処理には、まさに脳全体を使う必要があるのです。

澤口教授によると、この複雑な動きによって脳の機能が高められるだけでなく、前頭前野(思考や創造性を担う部分)が発達し、脳梁(情報をやり取りする経路)が太くなり、小脳(運動機能や知的機能、感情的機能を担う部分)が大きくなり、海馬(記憶力を担う部分)までもが大きくなる、つまり脳の構造自体が発達する(地頭が良くなる)そうです。

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なお、冒頭のクーポン利用者の卒業生の男の子には、音楽の効果について「音楽は規則性の集まりであり・・・」という難しい説明をされたので、(私は楽譜をまともに読めないレベルなので彼の説明が理解できませんでしたが)今回ご紹介した点だけでなく、音楽にはまだまだたくさんの能力向上のメカニズムがあることを感じています。

「教育クーポン」というと、どうしても進学に直結する学習塾を利用先として連想することが多くなります。また、現状から言っても、CFCのクーポンは学習塾で使われることが一番多くなっています。ですが、今回ご紹介したような勉強以外の活動の効果についても注目すべきものがあります。こういった効果にも理解を深めながら、子どもたち一人ひとりの「やりたい!」を応援していきたいと思います。(山本雅/広報チームマネージャー)

【参考文献】
E. Glenn Schellenberg ”MUSIC LESSONS ENHANCE IQ”
Kraus et al. ”Neural Plasticity with Community Music”
PTNA「今こそ音楽を!第3章 脳科学観点から~澤口俊之先生インタビュー(1)」
ピアノが脳にいいってホント?

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