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発達障害と子どもの貧困ー注目される学校外教育機関の役割ー

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昨年末、文部科学省が2017年度から発達障害のある子どもたちが別室などで学ぶ「通級指導」を指導する教員の配置を今より手厚くすることを決めた、というニュースが目に入りました。

発達障害とは、単純化して説明すると、広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害に分類される脳機能の障害で、浜松医科大学の杉山教授によると、「発達の凸凹」※1と表現されています。

発達障害の子どもたちに学校現場が対応するうえで難しい点の1つが、一人ひとりで見られる特性が異なるということです。このため、学校では個別的なきめ細かい指導が求められます。しかし、一クラス48人もいる通常学級ではなかなか教員の目が行き届かず、特別支援学級でさえも専門免許がある教員が3割程度であるということが課題になっています。そんななか、冒頭のニュースは小さな前進だと感じました。

▼参考:特性の例
・広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群):コミュニケーションの障害、言葉の発達の遅れ、社会性の障害、興味のかたより 等
・注意欠陥多動性障害(ADHD):集中できない、じっとしていられない、衝動的に行動する 等
・学習障害:読む、書く、計算する等が極端に苦手 等

◆発達障害と子どもの貧困の意外な接点

また、個人的には貧困問題を考えるときに、発達障害が経済的な困難を抱えるきっかけになっているということが重要なテーマの一つであるとも感じています。

例えば、徳島大学の調査によると、「引きこもり男性の26%は、発達障害の可能性が高い」ことが明らかになっており※2、アメリカでも「アスペルガー症候群の成人の75~80%はフルタイムの仕事に就いていない」と言われています※3。こういった背景には、スキル面の課題だけでなく、発達障害の方々が「空気を読めない」等と言われ、周りの人々の理解を得にくいことがあると思います。

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そして、発達障害は自身の就労だけでなく、そのご家族にも影響を与えることがあります。以前CFCクーポンに応募してこられたご家庭からは「子どもに障害があり、一人で家にいると不安がるので、フルタイムで働きに出られない」という声が寄せられたことがありました。

また、アスペルガー症候群のある方の家族等が、コミュニケーションをうまく築けないために鬱病などにかかってしまう「カサンドラ症候群」の事例も少なくないそうです。発達障害にかかわる課題は、本人や家族だけで抱えず、学校や病院、学習塾など専門知識のある方々のサポートが不可欠だと感じます。

◆注目を集める学校外教育機関の役割

そんななか、私が最近注目しているのが、株式会社LITALICOの取り組みです。同社は、「障害のない社会を作る」というビジョンで近年事業を急拡大させており、発達障害のある子どもへの教育サービス(学習塾等)や、障害のある方に向けた就労支援サービス等を展開しています。学習塾での教材は、何千種類もの中から選択し、時には手作りの教材を作る等して一人ひとりにあった教育サービスを提供しているそうです。

文部科学省の2012年の調査によると、子どもの6.5%に発達障害の可能性があることが明らかにされましたが、実際にはもっと多い可能性があると言われるほど、現在多くの方々が発達障害と向き合っています。LITALICOでも、5000人の方々が入会待ちとなっているそうです。

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CFCの活動でも、発達障害のある子どもを受け入れられる学習塾が簡単に見つからず、子どもがクーポンを利用開始するまでに時間がかかってしまうというケースがあります。LITALICO等の大手企業が事業展開をしているのは現在のところ首都圏や関西圏が中心となっていますが、今後こういった教育事業者が地方でもノウハウを拡げていくことを望んでいます。

浜松医科大学の杉山教授は、発達障害の特性は環境で抑えることができるとおしゃっています※1。実際、自閉症がありながら作家として活躍している東田直樹さんや、アスペルガー症候群・ADHDがありながら大手グローバル企業で活躍している岩本友規さん等、適切な知識や人との出会いを通して、特性を強みに変えたり、特性を抑えたりして社会で活躍している方もいらっしゃいます。

CFCとしても、様々な特性のある子どもたちがのびのびと過ごし、そして将来自立できるよう、学びの機会を提供していきたいと思っています。(山本 雅/広報チームマネージャー)

【子どもの貧困や教育格差、CFCの活動についてもっと知りたいあなたへ】

毎月の活動説明会で、「子どもの貧困」やCFCの活動内容等について詳しくお伝えしています。活動をより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

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【参考】
※1 杉山登志郎(2007)「発達障害の子どもたち」講談社現代新書。

※2 境泉洋,堀川寛,野中俊介,松本美菜子,平川沙織,NPO法人全国引きこもりKHJ親の会(2011)「「2010年度 引きこもり」の実態に関する調査報告書⑧-NPO法人全国引きこもりKHJ親の会における実態-」徳島大学総合科学部境研究室。

※3 Autism Spectrum News(2011年秋号)“Tackling the Unemployment Crisis for Adults with Asperger Syndrome” 2017年2月3日アクセス。

・朝日新聞(2016年12月20日)「発達障害児への教員、強化 教員1人に16.5→13人」2017年2月3日アクセス。

・文部科学省(2012)「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」2017年2月3日アクセス。

・長谷川敦弥(2016)「発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。」SB新書。