ニュース

高校中退から見る経済格差

8月のイベントといえば、皆さんは何を思い浮かべますか。夏休み、花火大会、海水浴、BBQ、盆踊り。きっと夏を満喫するイベントを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

私も数年前までは、夏らしいイベントを連想しましたが、今ではもうひとつ思い浮かべるイベントがあります。それは、『高等学校卒業程度認定資格の試験日』です。以前は大検と呼ばれていた資格です。本当は遊びたいこの季節に、教室の中で皆一生懸命勉強していた生徒の姿が思い出されます。

◆「高等学校卒業程度認定資格」(高認)とは

以前、私は兵庫県の西宮にある引きこもりや不登校など、さまざまな理由によって中等・高等教育のドロップアウトを経験した青少年たちに対して、進学や就労などの支援を行う団体で働いていました。高校を中退したからといって人生は終わりではなく、むしろ中退をスタートとして捉え、様々な生き方を一緒に見つけていく。そんな団体で知ったのが、高認(こうにん)です。

そもそも『高認』とは何なのか。文部科学省のHPによると、“様々な理由で高等学校を卒業できなかった者等の学習成果を適切に評価し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかの認定をするための試験”とされています。例年8月と11月の年2回の試験が行われ、選択式で科目ごとに試験があり、既定の科目数を合格すれば、大学や専門学校等への受験資格が与えられます。

平成28年12月の文部科学省の発表では、同年11月に行われた試験の受験者数は11,111人、うち1つ以上の科目に合格した者は9,637人、つまり受験者の約9割が1科目以上は合格しています。合格者の平均年齢は21.8歳、最高年齢は68歳という結果でした。

受験者は中学生の時に不登校状態で高校には進学しなかった人や、高校を中退した人、子育てがひと段落して学び直しを考える人など様々ですが、試験合格者の中で最も多い最終学歴は高校中退者で、約5割を占めます。

◆増加する経済的理由による高校中退者

高校中退者は平成2年の123,529人をピークに、平成27年には49,263人と数・割合共に減少傾向にあります。しかし、その理由を比較すると、経済的理由から高校中退を選択する生徒の割合は、平成24年度は853人と全体の1.6%だったのに対し、平成25年度は1,337人と全体の2.2%、平成27年度には1,364人と全体の2.8%と、人数こそ全体から見れば多くはありませんが、ここ数年は増加傾向にあります。まさにここに経済格差よる教育の格差が生まれているのではないでしょうか。

CFCの学校外教育バウチャー(CFCクーポン)では、直接学費として利用することはできません。しかし、高校中退者が高認を受けるために勉強したいと思った時は、CFCクーポンを塾などで利用することができます。また、各地方自治体の教育に対する補助などを併用することができれば、より経済的な負担が軽減されます。

経済的な理由で高校を中退しなければならないような状況でも、中退後に高認を受けたくても受けるための勉強ができない場合でも、そこに届く様々な支援をつくり、伝える事が出来れば、状況や選択肢は変わってきます。支援或いは選択肢の一つとしてCFCの活動が繋がるように、今後も取り組んでいきたいと思います。(石井 孝洋/関西事務局長)

【子どもの貧困や教育格差、CFCの活動についてもっと知りたいあなたへ】

毎月の活動説明会で、「子どもの貧困」の現状、CFCの活動内容等について詳しくお伝えしています。

CFCの活動をより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

CFCセミナー(活動説明会)詳細

■ 参考
文部科学省(2017)「高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)」
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/
文部科学省(2016)「平成28年度第2回高等学校卒業程度認定試験実施結果について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/12/__icsFiles/afieldfile/2016/12/02/1379876_01.pdf
文部科学省(2014)「平成25年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/10/__icsFiles/afieldfile/2014/10/16/1351936_01_1.pdf
文部科学省(2013)「平成24年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/12/1341728.htm