大学入試・新テストは格差を助長するのか?
7月13日に、文部科学省がセンター試験に代わる「大学入学共通テスト(通称:新テスト)」の実施方針を公表しました。
これは、政府の教育再生実行会議が入試制度改革を提言し、「知識偏重から思考力や表現力を問う試験にする」ことを狙ったものですが、学校や塾・予備校等の教育業界では、あらゆる憶測と懸念、少しの期待が渦巻いている状況です。
◆大学入試・新テストで何が変わるのか
この日に発表された主な方針としては、2020年度の入試(現中3生)から以下のような変更となることが伝えられました。
1)国語:現行のマークシートに加え、80~120字程度の問題を含め3問程度の記述問題が加わること。
2)数学:現行のマークシートに加え、数式・問題解決の方略などを問う記述問題が3問程度加わること。
3)英語:英検、TOEIC等の英語の外部検定試験を活用し、「読む・聞く・話す・書く」の 4技能を評価すること。(高3の4月~12月に2回まで受験可能⇒結果が大学にいく)
4)AO入試・推薦入試:小論文、プレゼンテーション、教科・科目に係るテスト、共通テスト等のうち、いずれかの活用を必須化すること。
特筆すべきは、記述問題の導入と英語試験における民間試験の活用ですが、僕が1番気にしているのは、公平性の確保と格差の部分です。
◆公平性の確保と格差の問題
例えば、記述問題の場合、誰がどのように採点をするのか?という部分が非常に気になる点です。
米国では、大学入試に関する担当職員が配置されており、そのプロが2人で採点を行い、その点が1点以上開く場合は、更に3人目を加えた採点をするという対応をしているそうですが、約50万人が一斉に受ける新テストでこのようなことが可能なのか気になる部分です。
もう一つは、CFCにも直結する格差の話です。英語の民間試験は、どの程度の金額で受講可能か、地域によっては交通費や宿泊費等の費用が発生しないか、民間試験を幼い頃から受講できる生徒が有利ではないか。
また、教師の対策も十分ではないと考えられるため、さらに学校外教育の利用有無が教育格差に繋がるのではないか、幼い頃からの家庭環境、保護者の意欲・子どもへの関わり方が重要になってくるのではないか(つまり、そのような環境がない家庭の子どもが不利にならないか?)等の懸念があります。
もちろん、現制度でもこのような教育格差は存在しますが、それを助長するのではないかと警鐘を鳴らす専門家は多くいます。
◆テストに含まれる「実社会とのつながり」
一方、個人的には共感する部分もあります。確かに入試に必要な力と仕事で必要な能力がつながっている感覚はありません。暗記力だけで解ける問題で良いのかという疑問もありました。
また、5月に大学入試センターが公表した記述問題例を見ると、面白いなと思う部分もあります。例えば、駐車場使用契約書を読み解く問題や、自治体の景観保護ガイドラインとそれを見た父・姉の会話を読んで解く問題があり、実社会とのつながりを感じます。
このような多くの懸念と少しの期待がある改革ですが、今後も注意深く動向を見守りつつ、CFCとしてやるべきことを進めていきたいと思います。(代表理事:奥野 慧)
毎月の活動説明会で、「子どもの貧困」の現状、CFCの活動内容等について詳しくお伝えしています。
CFCの活動をより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。
【参考】
・文部科学省「高大接続改革の実施方針等の策定について(平成29年7月13日)」 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/07/1388131.htm
・大学入試センター「モデル問題例等について」
http://www.dnc.ac.jp/corporation/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/model.html