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子どもの貧困と将来の夢

新年を迎え、今年の目標や夢、抱負を語った方も多いと思います。年始のニュースでも子どもの夢「大人になったらなりたい職業ランキング(対象:幼児~小学生)」が発表され、男の子の学者・博士が15年ぶり、女の子の食べ物屋さんが21年連続のトップを飾りました。

中学生・高校生も調べてみると、「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」によれば、男の子ではエンジニアやプログラマー、ゲームクリエイター、YouTuber、女の子では芸能人、イラストレーター・アニメーターや、医療関係、公務員などが上位を占めていました。

◆早期から将来を具体的に考える子どもたち

加えて、同調査で興味深いのは、早期から将来について具体的に考えている子どもが増えているということです。

「自分の10年後を具体的に考えているか」の問いでは、なんと中学生で25.5%、高校生で18.1%が「具体的に考えている」と答えています。さらに中学生については、2011年の結果と比較すると、7.3%から25.5%へと大きく上昇したことも分かりました。

将来なりたいものにICT関連の職業が挙がるなど、子どもの夢は世相を表していると共に、特に昨今の子どもたちは中学生の頃から様々な情報に触れ、具体的な将来像を描き始めていると考えられます。

このことからも、中学校時代は進路や将来を考えるうえでターニングポイントになり得るとても大切な時期だと言えるのではないでしょうか。

◆貧困世帯の子どもたちは夢を持っているか?

一方、2014年に報告された「『大阪子ども調査』結果の概要」によると、「将来の夢がない」とした子どもの割合は家庭の経済状況と関係しているとされています。

同調査では、「将来の夢がない」と答えた子どもの割合は、小学生では貧困層:24%、非貧困層:18%、中学生では貧困層:44%、非貧困層:38%と経済的に厳しい家庭の子どもの方が将来の夢を持っていない割合が多いことが明らかになっています。
 

図1 将来の夢がない子どもの割合(「『大阪子ども調査』結果の概要」よりCFC作成)

 
2012年の「親と子の生活意識に関する調査」でも、家庭の経済状況による差が表れています。経済状況別に見ると、「父は自分のことをよく分かっている」と感じているのは、非貧困層66%に対し、貧困層は60%、父親と進路や将来について話をする割合も、非貧困層:56%、貧困層:47%と大きな開きが見られます。

また、「『大阪子ども調査』結果の概要」では、経済的環境以外にも、年齢によっても将来の夢を持つ子どもの割合が異なる点を指摘しています。「自分の将来が楽しみだ」への肯定的回答は、小学生:79%から中学生:61%と大きく減少していました。将来の夢を持つ子どもの割合は年齢とともに減り、「社会への理解が深まる一方で自分の具体的な夢が見いだせない」のかもしれないと考察されています。

◆大人も夢を持っているか?

多感な子どもたちが、社会や自分の周りの環境を理解するにつれ、夢を持たなくなってしまう・・・これは、社会を担う私たち皆が考えなければならない課題です。

先述の中高生の意識調査では、中学生が考える「カッコいい大人」のイメージ第1位は「好きなことに打ち込んでいる」でした。

CFCでは、大人よりもう少し近いロールモデルになり得る存在として、大学生ボランティア(ブラザー・シスター)が子どもたちをサポートしています。

身近な人や大人が夢を持ち、前向きに取り組んでいる姿を見せられれば、子どもたちももっと夢を描けるのではないか、そしてその夢に近づくためにCFCが寄り添うことができたら、と改めて考えた年の初めでした。(関西事務局員/川瀬 智子)

【日本の子どもの貧困の現状についてもっと知りたいあなたへ】

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【参考】
・第一生命保険(2018)「大人になったらなりたいもの」2018年1月16日アクセス。
・ソニー生命保険(2017)「中高生が思い描く将来についての意識調査2017」2018年1月16日アクセス。
・阿部彩、埋橋孝文、矢野裕俊(2014)「『大阪子ども調査』結果の概要」2018年1月16日アクセス。
・内閣府(2012)「平成23年度『親と子の生活意識に関する調査』」2018年1月16日アクセス。