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生活保護世帯の子どもたちは進学できない?

先日、CFCのブラザー・シスター(大学生ボランティア)からの呼びかけで、生活保護制度に関する勉強会を開催しました。

ブラザー・シスターが日々電話面談をしている中にも生活保護世帯のお子さんがいらっしゃるため、制度への理解を深めようと保健師さんを講師にお招きし、現場での実例も含めた様々なお話を聞かせていただくことができました。

◆生活保護世帯の子どもたちは大学に進学できない?

その中でブラザー・シスターから出てきた質問のひとつに、「生活保護世帯の子どもたちは、大学や専門学校に進学することができるのか?」というものがありました。

子どもたちの進学希望を聞き取り、相談相手になることもある彼らにとっては重要な問題です。講師の先生からのお答えとしては「進学してはいけないという規定があるわけではないが、現在の制度ではかなり難しい」というものでした。

現在の生活保護制度では、高校生に対して「生業扶助(就労に必要な技能の修得等にかかる費用)」という形で費用が扶助されています。

しかしながら、保護の要件には「世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを(中略)活用することが前提」とあり、高校を卒業した子どもたちは基本的に「労働する能力がある」とみなされます。そのため、大学等に通うための扶助は存在しませんし、子どもが受け取る奨学金等が世帯の収入として扱われ、保護費から差し引かれる場合もあります。

それを避けて進学するために、生活保護を受けている保護者の世帯から、子どもを切り離して別の世帯として扱う「世帯分離」という手段を使うケースもありますが、こちらもそう簡単なことではありません。保護者世帯では人数の減少に伴って保護費も減少しますし、子どもたちは生活費、学費等のうちかなりの割合を自ら負担することとなります。

◆生活保護は進学における大きな壁

大阪府堺市が実施した「生活保護世帯の大学生等に対する生活実態調査」によると、堺市の生活保護世帯の学生のうち65.9%が授業期間中でも週に3日以上アルバイトに従事しているほか、86.6%が奨学金を受給し、52.8%が「経済的に勉強を続けることが難しい」という不安を抱えています。

日本学生支援機構が全国の大学生を対象に行った「学生生活調査」の数値(それぞれ順に49.9%、51.3%、17.3%)と比較するといずれも数値が大きく、生活保護世帯の学生が、経済的に苦しい中で大学生活を送っている様子が見て取れます。

内閣府の発表では、全世帯における子どもたちの大学等進学率が73.2%であるのに対し、生活保護世帯では33.1%となっており、生活保護が進学における大きな壁となっている現状が如実に表れています。

図1 生活保護世帯の大学生(堺市)と全国の大学生の比較
(「『堺市生活保護世帯の大学生等に対する生活実態調査』結果の概要」よりCFC作成)

生活保護制度が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」は時代とともに移り変わって然るべきものですが、7割超の子どもたちが大学等に通う時代に、高校を卒業したら就労することが基本とされ、進学してもなお大きな負担を強いられる現行制度はマッチしているのでしょうか。生活保護制度には多様な論点・課題が存在しますが、この点についても一歩前に進む改革がなされることを期待して止みません。(仙台事務局員/吉岡 新)

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【参考】
・厚生労働省(2018)「生活保護制度」2018年2月14日アクセス。
・堺市生活擁護管理課(2017)「『堺市生活保護世帯の大学生等に対する生活実態調査』結果の概要」2018年2月14日アクセス。
・内閣府(2017)「平成28年度子供の貧困の状況と子供の貧困対策の実施状況」2018年2月14日アクセス。