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“不登校”の背景にある貧困―震災後に増加した不登校

僕が「不登校」という課題を最初に感じたのは、小学校2年生の頃です。近所に住んでいるクラスメイトが学校に通わなくなり、いつも学校帰りにプリントや先生からの手紙を届けていたのを思い出します。

その頃は、この子が「不登校」だという認識は当然なく、かつその背景にある様々な問題についても感じることはありませんでしたが、今思えば、何らかの課題を抱え、その結果として長期間学校を欠席していたのだと思います。

◆貧困と不登校には関係がある?

CFCが活動拠点を置く宮城県は、特に震災以降不登校の児童生徒が増え、2012年度に中学生における不登校出現率が全国最多となり、その後も全国1、2位の高さになっています。

同県の2015年度の出現率(中学生)は3.53%で、計2,833人が不登校状態にあります。これは、震災前より0.51ポイント増となっており、人数ベースで425人の増加です。

この増加に関して重要な情報として、CFCが2015年に発刊した白書のデータがあります。ここでは不登校と世帯収入の関連を確認しましたが、500万円以上の世帯で6.2%だった不登校経験の割合が、100万円未満の世帯では17.9%と、11.7ポイントもの差がありました。

震災が直接影響を与えているか否かは分析が必要ですが、少なくとも震災による経済的ダメージが不登校出現率の増加に繋がっていると考えられます。

◆不登校の理由とその対応

では、不登校になる理由は何でしょうか?

文科省の学校基本調査を見ると、本人の状態として「無気力(30.6%)」「不安(29.7%)」が最も高い状況です。そして、この状況を引き起こす理由として、「学業不振」、「友人関係をめぐる問題」、「進路の不安」が高い傾向にあります。

また、近年は「発達障害」が背景にあるケースも多く見られます。不登校の支援と言うと、よく「メンタルに問題を抱えている」、「心のケアが必要」という論調に成りがちですが、この結果だけを見ると、必ずしもそう言い切れるものではありません。

近年、CFCクーポン利用者でも不登校や不登校傾向の子どもたちが増加し、そのようなケースに対応することも増えていますが、メンタルの問題より、通学していないことで生じる課題(基礎学力や非認知スキルの補填)への対応が必要だと考えています。

◆子どもを中心とした多様な教育の場が必要

2016年、教育機会確保法が成立し、「不登校児の多様で適切な学習活動等」の必要性が国会でも認められましたが、フリースクール等の機関は出席扱いされない、かつ費用が掛かるケースも多く、義務教育の場として認定されているとは言えません。

フリースクール等の学校外教育機関を義務教育化することには反対も多く、更に議論が必要ですが、個人的には学校と学校外という二分法で語られない、子どもを中心とした多様な教育の場があることが重要だと感じています

当法人には、クーポンを利用してフリースクールに通う子どもたちも増えていますが、次年度より、当法人も不登校等への課題に対する更なるチャレンジを考えています。CFCとして今までの経験をもとに何ができるのか?しっかり考え、行動していきたいと思います。(代表理事/奥野慧)

※追記(2018/8/31): 2018年度から、経済的に困難な不登校の子どもたちに特化した支援の枠組みを新設しました。

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【参考】
・文部科学省(2011)「平成22年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査
・文部科学省(2017)「平成27年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査
・文部科学省(2015)「平成27年度学校基本調査
・今井悠介、奥野慧(2015)「東日本大震災被災地・教育白書2015」