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読書習慣の背景にある経済格差

『大学生、一日の読書時間0(ゼロ)5割越え』先月、こんなタイトルのニュースに目を引かれました。全国大学生活協同組合連合会が、第53回学生生活実態調査の概要報告を発表し、大学生の読書時間が減少しており、1日の読書時間が0分の割合が53.1%にのぼることがわかったというのです。

◆大学生の読書時間が減少

この調査の結果によると、1日120分以上読書する学生は例年並みの5.3%、次に30分未満(0含まず)が10.2%、120分未満が13.0%、60分未満が17.0%と続き、0分が53.1%となっています。全体的に読書時間は減少傾向にあるようですが、顕著なのは0分の層の拡大で、5年間で18.6%も増加しています。

図1 大学生の読書時間(「第53回学生生活実態調査の概要報告」よりCFC作成)

なぜ読書時間は減少したのでしょうか。思い付いた要因の一つがスマートフォンの普及でしたが、こちらについては同報告にてまとめられており、スマートフォンの利用による読書時間の減少効果は弱いと確認されたそうです。むしろ、最近の大学生の「高校までの読書習慣」が全体的に下がっていることが、大きく影響しているとまとめられていました。

この報告を目にして思ったのは、読書がもたらす効果についてでした。よく言われるのが、「読書をすると頭が良くなる」というものです。私も親に言われていた記憶がありますが、本当にそうなのでしょうか。ここに読書(読書活動)と学力についての調査研究があります。

◆保護者の読書活動が子どもの学力をあげる?

お茶の水女子大学の『平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した 学力に影響を与える要因分析に関する調査研究』によると、家庭における読書活動や生活習慣に関する働きかけ、親子間のコミュニケーション等は、いずれも学力に一定のプラスの影響力があることがわかっています。

なかでも、家庭における読書活動が子どもの学力に最も強い影響力を及ぼすことが明らかになっています。これは単に子どもが親に強制されて本を読めば学力が上がるというものではなく、保護者がいかに子どもに率先して関わり、読書している様子を子どもに見せるか、または勧めるかといった行動や習慣が重要で、それらが子どもの学力に強い影響力を及ぼしているかということを示しています。

この調査研究では、保護者による読書活動には以下のような変数が用いられていました。
・「小さいころ絵本を読み聞かせした」
・「子どもに本や新聞を読むようにすすめている」
・「子どもと読んだ本の感想を話し合ったりしている」
・「子どもと一緒に図書館に行く」
・「保護者が本を読む」
・「保護者が新聞の政治や社会問題に関する記事を読む」

◆ 家庭の経済力と読書習慣の関係

子どもの貧困の解決に対してアプローチしているCFCとして重要だと感じたのが、家庭での読書習慣には、家庭の所得や、親の学歴などが影響する点です。

この調査では、家庭の社会経済的背景(SES:家庭の所得、父親学歴、母親学歴を合成し得点化した値)別に、保護者による読書活動を分析しています。例えば小学6年生のSESの高い家庭の68.4%の保護者は本を読みますが、低い家庭は41.4%にとどまることがわかっています。つまり、SESの高い保護者ほど積極的に読書活動を行っている割合が高いという結果でした。

子どもは幼少期に親からどのような影響をうけるのか、また保護者は子どもにどのような影響を与えるのか。学歴や所得といった要因ではなく、子どもの経験・体験の場、学びの機会は全ての子どもに等しくあって欲しい。CFCの活動がこれらの関わりの歯車の1つとなれるよう、これからも取り組んでいきたいと思います。(関西事務局長/石井孝洋)

【東北応援月間】東北の子どもたちに教育機会を届けよう

3月31日(土)まで、東北の子どもたちを継続的に応援する「CFCサポート会員」を100名募集しています。震災や家庭の事情で子どもたちの学びの機会が制限されてはなりません。ぜひ活動にご参加ください。

「東北応援月間」詳細

参考
・全国大学生活協同組合連合会(2018)「第53回学生生活実態調査の概要報告」
・国立大学法人お茶の水女子大学(2014)「平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した 学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」。