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生活保護制度にまつわる、よくある疑問

受験期や新年度の初めの時期には、子どもたちからこんな質問を受けることがあります。

・「高校生になったのでアルバイトをしたいけど、生活保護を受けていてバイトができますか」
・「生活保護を受けているけど、大学に進学できるのでしょうか。」

そんな疑問や不安です。

生活保護制度は仕組みが複雑とよく言われますが、今回、宮城県保健福祉部社会福祉課に伺い、CFCの活動や子どもたちに特に関わる「収入認定」「世帯分離」について詳しく伺いました。

◆「収入認定」について

生活保護制度では、収入に変動がある場合、届け出の義務があります。

これは、例えば高校生のアルバイトでも同様で、まずは担当のケースワーカー(※)に相談し、然るべき届け出をすることが必要です。
※ケースワーカーは、生活保護世帯に必ずつく担当職員で、様々な課題の解決、指導に当たる者。

「届け出をしたら、アルバイト代が全部収入として認定されて、もらえる保護費が減らされるのではないか?」

生活保護を受けている方たちの中には、そんな不安をもつ人も多いと思いますが、実はそんなことはありません。収入がそのままの金額でカウントされるわけではないからです。

少し込み入った話になりますが、まず、収入から交通費、所得税、保険料等の必要経費が控除され、加えて基礎控除として引かれる金額があります(5万円の収入で約18,000円)。

さらに、「自立助長の観点から生活保護の趣旨目的に反しない貯金(積立)」は、認められています。これには、大学や専門学校の進学費用や就職のための資格取得費用等も含まれています。これらをすべて控除した額が収入として換算されます。

したがって、収入認定される金額を計算するための公式は「収入-必要経費-基礎控除-進学積立等」となり、高校生のアルバイト収入であれば、ほとんどの場合、収入認定される金額はありません。

社会福祉課の方も言っておられましたが、届け出たら生活費が減ってしまうのではないか?という誤解が1番多いそうです。届け出をきちんとすれば、基礎控除や進学費用としての積立も可能になります。しかし、届け出をしない収入は不正受給と見なされ、返還が求められます。

◆「世帯分離」について

これは、大学等の進学の際によく出てくる言葉で、CFCの活動にとって大事なキーワードです。

まず、生活保護の大前提は、個人ではなく世帯単位であるということ。世帯分離とはこの原則を特例的に除外する措置で、例えば、父・母・息子の世帯において、息子が大学に進学する場合、息子のみを生活保護から外すことを意味します。

なぜ、進学には世帯分離が必要なのか?

これは、生活保護制度そのものが、生活に困った時に使える最後のセーフティーネットという考え方でできており、働ける人はまず働くことが求められているためです。これを「稼働能力の活用」と言いますが、世帯分離をして保護から外れることにより、この「稼働能力の活用」を求められなくなり、進学が可能になるという考え方です。

また、子どもが大学進学をすると、子どもの分の支給が減額されます。よって、子どもは学費を奨学金で全額まかない、アルバイトで自分の生活費を稼ぐことが必要となります。

CFCでは、この7年間で十数名の生活保護世帯の子どもが大学に進学しましたが、大学生となった彼らの生活は、奨学金を背負い、ほとんど毎日アルバイトをする。そんな過酷な生活でした。

これらの実態により、またはこのように生活していくことが想像しがたいことにより、生活保護世帯の大学進学率は一般世帯(53.9%)から大きくかけ離れた19.2%に留まっています。

◆私たちにできること

では、我々に何ができるのか。教育クーポンを提供し、力を育むことはもちろん重要ですが、小学生~高校生にかかる学習の費用をその後の進学や就職の準備資金にまわし、積み立てていけるようにすることも大切です。教育クーポンは、教育に使途を限定した資金であるため、収入認定されることもありません。

また今回、僕が専門家に話を聞きに行くきっかけになったように、ブラシスたちの面談で、子どもの状況を把握する、悩みを聞くことも重要です。状況把握ができていれば、専門機関や担当のケースワーカーに相談し、具体的なアクションにつなげていくこともできます。

そして、最後はやはり制度を変えていくことです。

これはCFCのチャレンジとも重なりますが、すべての子どもに機会を提供するためには、最終的に制度を変えていくしか方法がありません。そして、現在、教育クーポン事業が少しずつ自治体の政策として話題にあがるようになったことは、多くの人が関わり、問題を共有し、少しずつアクションを起こしていった結果だと思います。

制度を変えるのは大きなことですが、そんな少しずつのチャレンジであれば我々にもできることではないかと思っています。ぜひ、サポーターの皆さんも、今後も一緒に歩んでいただければ幸いです。(代表理事/奥野慧)

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