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外国ルーツの子どもたちにとっての学校外教育の役割とは―「外国人へのおもてなし」ではなく「多文化共生社会」へ

2020年の東京オリンピック開催が決まり、日本のインバウンド観光はますます盛り上がりを見せています。それと同時に、私たちの周りには、観光客ではなく生活者として日本に暮らす外国人の数も増えてきています。

1990年に出入国管理及び難民認定法(入管法)が改正されて以降その数は年々増え、2017年末には日本における在留外国人の数は256万人を超え過去最高を記録しました。その中に、「外国につながる子どもたち」、「外国にルーツのある子どもたち」と呼ばれ、多様な言語や文化をバックグラウンドに持って日本の地域社会で暮らす子どもたちがいます。

■10年間で日本語指導が必要な子どもたちが急増

公立学校において「日本語指導が必要な児童生徒数」は約3万7千人(2014)と、この10年間で1.6倍にも増えました。

彼らが普段使用する言語も、ポルトガル語・中国語・フィリピノ語・スペイン語・ベトナム語など多岐にわたります。来日時の年齢や滞在日数、両親の日本語能力、家庭での使用言語などによって、子どもたちの日本語力はまちまちです。子どもによっては、日本語と同時に母語での指導を必要としている子もいます。

日本語が全く分からないようであれば指導の必要性にも気づきやすいですが、友だちや先生との日常会話は問題なくても、授業で使われている言葉が理解できず学年相応の学習についていけない子どももいます。

■日本語指導以外のサポートの必要性

そのような子どもたちも学校教育を十分に受けられるよう、文部科学省では外国人児童生徒の在籍校に日本語指導を行う教員を特別配置したり、各自治体において行われる公立学校への帰国・外国人児童生徒の受入促進・日本語指導充実に関する取り組みを支援する事業を行ったりしています。

また、子どもたちの学習面の支援だけでなく、精神面のケア、そしてその親たちが日本で必要な就労スキルを身につける機会や、子どもの進学・就職に関する知識を得ていく機会も大切です。多文化共生センター大阪が2016年度に行った「外国人の若年者のライフヒストリー調査」によると、親子間でのコミュニケーション不足、学校生活や教育に対する意識の違い、また日本での生活がいつまで続くか分からない不安などから、子どもたちが家庭の中でも失望や孤独感を感じている様子が浮かび上がっています。

■外国ルーツの子どものための学習塾「Tabunka Shingaku Juku」

このように、多様化する言語やケアのニーズに応えるためには、地域の人々の協力が不可欠です。その一例として、大阪市では外国にルーツを持つ子どもたちが進学を目指して地域の言語ボランティアと共に学ぶ学習塾「Tabunka Shingaku Juku」が立ちあがっています(現在は「Tabunka Juku」に名称変更)。

この塾は、多文化共生センター大阪が2005年から行ってきた外国にルーツを持つ子どもたちへの学習支援教室「サタデイクラス」から発展したもので、2013年にCFCが凸版印刷株式会社とともに運営している「大阪市塾代助成事業」が始まったことを契機に生まれました。支援のニーズがありながらもなかなか手の届きにくかった課題に、学校外教育クーポンの仕組みがうまく合致して新たなサービスが生まれた好事例といえます。

塾講師にはかつてセンターで学習支援を受けた元学習者もおり、地域の中でよいサイクルが生まれていることがうかがえます。学習用語の理解から高校受験対策のみならず、学校生活で必要なマナーの習得、子どもとその保護者への母語による支援まで行っており、地域の外国人の居場所のひとつにもなっています。

■「外国人へのおもてなし」ではなく、「多文化共生社会」へ

かつてニューカマーと呼ばれブラジルやペルーから来日した人々の中には、すでに2世代・3世代と日本で暮らしている人々もいます。近年増えている、ベトナムやネパール、インドネシアなどから来日する人々の中にも、日本で働きながら家族を持ち、子育てをしていく世代も出てくるでしょう。

その子どもたちが社会の一員として学び成長していくためにも、「外国人」へのおもてなしばかりではなく、真の「多文化共生社会」について考えていかなければと思います。(関西事務局員/有銘佑理)

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【参考】
・文部科学省(2016)「外国人児童生徒等教育の現状と課題
・法務省(2018)「平成29年末現在における在留外国人数について(確定値)
・多文化共生センター大阪(2017)「外国人の若年者のライフヒストリー調査〜貧困の連鎖を防ぐために〜
・坪内好子(2017)「多文化な子どもへの支援―高校入試へのサポートとは―