「子どもの“居場所”になる面談に」 学び、深く理解して子どもと向き合う大学生ボランティア
電話をかけると、子どもは泣きじゃくっていた。ブラザー・シスター(ブラシス)の大学2年生、鈴木梨里子(20)は「話せなかったら別の日でもいいし、話したいなら落ち着くまで待っているからね」と伝えた。
5分ほど待っただろうか。子どもは少し泣きやんで、悩みを打ち明け始めた——。「どうしたの?って質問攻めにはしません。なるべく会っているような感じになるよう、電話越しの姿をいつも想像しながら話をするように気をつけています」と鈴木は話す。
◆似た経験をしてきた自分にできること
母子家庭で育った。「スタディクーポンを利用する子どもたちに似た経験をしてきた私だからできることがあるかもしれない」と思い、CFCのブラシスに加わった。
初めは「この活動を続けられるのかな」と悩んだ時もあった。子どもの話すことに、自分の過去と重ね合わせてしまい、毎回「心がざわついてしまった」。周りの仲間や職員に相談したり、研修を受けたりしながら、徐々によい距離感で子どもと向き合えるようになった。
◆子どもの一つひとつの選択を応援したい
子どもの家庭環境は変えられない事実があるなかで、常に自分の役割を探す。「進路の悩みを聞いていると、家庭の金銭面を気にして進路を考えている子がいて……。すごくわかるなって思って。私たちは大学生だから、大学に行ったほうがいいと思いがちだけど、就職しようとする子にも、一つひとつの選択を応援してあげたいと思っています」と話す。
その思いに誠実でありたくて、自分たちがあまり知らない「高卒就労」について、専門家を呼んで勉強会をブラシスのメンバーらと企画したこともあった。
「マニュアルがあるわけではないので、本当に一つひとつのケースとブラシスみんなで向き合って、自分たちができることを考えてやっています」。ブラシスと子どもの電話面談は1対1。しかし、「子ども1対ブラシス50で向き合っている」と感じている。
◆子どもの“居場所”になる面談に
東日本大震災の発災時は小学6年だった。しばらく体育館で避難生活を送った。全く知らない人と毛布を共有し、パーソナルスペースは全くなかった。災害による生活の激変にショックが大きすぎて、ただ呆然としていた。
しかし、校庭に出ると、同級生が炊き出しを手伝っていた。「私は何をしているんだろう。誰かがやるんじゃダメなんだ」。そう思ったのが、人生の大きな転機だった。「自ら考えて行動する」と心に誓った。
夢は養護教諭になること。元々体が弱くて保健室に行くことが多かった。次第に家族のことや進路の悩みも相談するようになった。評価する担任の先生でもない「中立的な立場」の養護教諭だから子どもに寄り添えることもあると思う。心身の支えになる居場所を作りたい。
「ブラシスの活動も形としては電話ですけど、ほんのちょっとでもいいから子どもたちの“居場所”が提供できたら」。自分が考える子どもとの向き合い方を模索し続けている。
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