「私の役目は、子ども自身が納得して答えを出せるように見守ること」大学生ボランティア髙森さくらさん
CFCでは、子どもの意思決定を支える上でも重要な役割を担う制度として、大学生ボランティアが月に一度クーポン利用家庭の子どもと面談を行う「ブラザー・シスター(ブラシス)制度」を取り入れています。
子どもたちの中には、思春期だったり、将来に対する悩みを抱えていたり、モヤモヤを上手く吐き出せなかったりする子もいます。
そんな子どもたちと接する上で、ブラシスはどのようなことを意識して活動しているのか?そして、子どもたちと近い関係性のブラシスだからこそ感じる、スタディクーポンの価値とは何か?
東京事務局のブラシス一期生として2020年から活動している、髙森さくらさんに聞きました。
(インタビュー担当:東京事務局スタッフ 内藤日香里)
■友だちとも親や先生とも異なる「程よい立ち位置」で向き合う
ーブラシスとして子どもと接する上で、普段から意識していることはありますか?
友だちのような感覚ではなく、かといって大人対子どもという感覚でもない、ブラシスならではの程よい立ち位置を守ることを常に意識しています。
子どもによっては10歳近く年齢が離れている場合もあるので、面談に慣れてくるとつい年下と接する感覚でアドバイスしたくなることもありますが、一旦は言葉を飲み込むように心がけています。
ー程よい立ち位置。それを見つける上で、何か工夫していたことはありますか?
面談では、勉強や進路に関する相談を受けたり悩み事を聞かせてもらったりするのはもちろん大切ですが、あえて趣味やプライベートの話ができる時間も多めに取るようにしていました。
子どもたちも、はじめのうちは何を話して良いかわからなくて不安を感じたり、身構えてしまったりすると思うんです。真面目な話だけではなく、くだけた話や他愛のない話をしてもいいんだよ、という空気を作ることで、面談の時間を安心して過ごしてもらえるようにしています。
■子ども自身が心から納得できる答えを出せるように後押しする
ー髙森さんが言ってくれたように、ブラシスは子どもが普段接する友だちや大人とも異なる立ち位置にありますね。髙森さん自身は、子どもたちにとってどんな存在でありたいと思っていますか?
私たちが接する子どもたちの中には、思春期で心に波や揺れのある子も多く、将来に対する漠然とした悩みや不安を抱えていたり、言葉にしにくいモヤモヤを上手く吐き出せなかったりすることもあると思います。
ブラシスは、子どもと月に一度の限られた時間だけを共有する、子どもの日常から少し距離のある存在です。そのような第三者的な立ち位置にある私たちだからこそ、子どもにとっていい逃げ道になれるのではないかなと思っています。
ー子どもが安心して心の内を吐露できる、そんな立場になりうるのがブラシスですよね。
そうありたいと思いますね。
一方、子どもに過度に頼られたり、こちらが入れ込みすぎたりしても、バランスの良い距離感を保つのが難しくなってしまいます。特に、子どもから助言や意見を求められたときは、踏み込みすぎることのないよう慎重に言葉や伝え方を選ぶようにしていました。
ーたとえば、どんなことを意識していましたか?
「どうしたら良いですか?」と聞かれたとき、安易に「こちらがいいよ」「こう思うよ」と伝えるのではなく、子ども自身が納得した上で結論を出せるよう後押しをすることを意識していました。
以前、将来は保育の道に進みたいという子を担当していた時、「奨学金を借りてまで大学に行くべきだと思いますか?」という質問をされたことがあります。
その子が通う高校では、学校の推薦を受けて専門学校に行けば、給付型の補助金が出る制度があったので、保育士資格を取るための専門学校に行くことが一つの選択肢でした。
一方、大学に通い、保育士資格とあわせて幼稚園教諭の免許を取得すると、将来保育士として働く際に選択肢が広がったり、より良い待遇を得られたりする可能性があり、奨学金を借りて大学に進学するという選択肢もありました。
もちろん、経済的な事情などもありますが、いったんは脇に置いた上で「その子自身がどんな将来を描きたいのか」を考えてもらうようにしました。
そして最終的に、その子自身が心から納得した上で「こっちの道がいい」と言葉にできるのを、辛抱強く待つように意識していました。
ー子ども自身が、自分の納得する答えを導き、自分の言葉にできるように促すことは大切ですよね。
■応援し見守ってくれる人たちの存在に、どこかで気づいてくれたら
ー最後に、髙森さんが思うブラシス制度の価値とは、どのようなものだと思いますか?
ブラシス制度は、金銭的支援としてのクーポンを届けるだけではなく、クーポンを提供した先で子どもや家庭のサポートを行うための仕組みの一つで、CFCならではの特徴的な仕組みだと思います。そしてその価値が現れるのは、必ずしもサポートをしている期間だけではないのかなと思っています。
子どもたちが将来大学に進学したり就職したりして社会に出て行った時、ふとしたタイミングで「自分のことを応援したいと思い、見守ってくれる人がいたんだな」と気づいてくれたとしたら、それはブラシス制度の大きな成果であり、価値なのではないかと思います。
ー様々な人の「応援したい」という想いが届き、いつか子どもたちの力になってくれたとしたら、それは本当に価値あることですよね。お話を聞かせてくれてありがとうございました!
<インタビューの前編では、ブラシスとして活動を始めたきっかけや、最も印象に残っている面談のエピソードを聞いています。こちらもぜひご覧ください。>
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