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『体験格差』解消の重要性

こんにちは、広報担当の山本です。

CFCでは7月に、スポーツや音楽・自然体験といった『体験活動』の格差解消にフォーカスした新事業のリリースを行いました。

最近はメディアなどでも「体験格差」という言葉が多く取り上げられ、少しずつ問題視されるようになってきましたが、その潮流にピンと来ていない方も多いかもしれません。

そこで、今回の記事では「なぜ体験格差を解決しないといけないのか?」という点について解説したいと思います。

■ 子どもの頃の体験活動が「非認知能力」を伸ばす

「非認知能力」とは、IQなどの「認知能力」に相対した概念で、学習意欲、労働意欲、努力や忍耐といったものを指しています。非認知能力は、進学や賃金水準の決定に寄与することや、認知能力を伸ばすこと等が様々な研究で明らかになっています。

そして、この非認知能力に、子どもの頃の体験活動がポジティブな影響を与えると言われています。例えば、海外の研究では、以下のような点が明らかになっています*1

・子どもの放課後プログラムに関して、参加者が自己認識(例:自尊心、自己概念、自己効力感)、肯定的な社会的行動、学習達成度等を有意に上昇させた*2

・音楽やダンス・芸術のレッスンや、スポーツ・放課後のクラブ等に参加する小学生が、より高い注意力、秩序、柔軟性、粘り強さ、学習における自主性、学習意欲を見せた*3

また、国内の調査でも、因果関係を示すデータではありませんが、21世紀出生児縦断調査の結果を用いて、小学校高学年の時期に体験活動を経験することで、その後の非認知能力(自尊感情など)にポジティブな影響を及ぼす可能性があることが明らかにされています*4

こういったデータは皆さんの個人の実感としても、違和感はないのではと思います。スポーツや文化系の部活で活躍してきた子どもが、強い集中力や学習意欲を発揮し、学業でも良い成績を修めている姿を目にしてきた方も多いのではないでしょうか。

■ 体験活動は、子どもの権利でもある

ただ、私たちは体験活動を「非認知能力や、その先にある認知能力・将来の所得等に影響を与えるもの」という視点だけでは見ていません。体験活動は、「子どもの権利」の1つであると考えています。

実際、日本が批准している「子どもの権利条約」では、子どもが経済状況等により差別されない権利、育つ権利、遊びやレクリエーション、文化活動への参加の権利を認めており、2023年4月から日本で施行された「こども基本法」は、同条約の精神に則り、基本理念を定めています。

しかし、今回CFCが実施した調査では、以下のことが明らかになっています。

これまで、日本で体験格差の問題が放置されてきた理由は、体験活動が、子どもたちが当たり前に持つべき「権利」や「必需品」と見なされていなかったためだと感じます。

例えばイギリスでは、子どもが月に1回水泳をすることには国民の約8割、子どもが趣味やレジャー活動をすることは国民の9割以上が必需品として合意しています*5

しかし日本では、この合意がないのが実情です。特に小学1~4年生の家庭が学校外の教育活動に対して行っている支出のうち、体験への支出は、学習への支出よりも多く*6、子どもたちの多くが学校外の体験活動に参加しているにも拘らず、です。

■ CFCの新しい挑戦

本人の意志に反して、スポーツや文化的な体験が「何もない」こと。やってみたいことを諦め続ける子どもたちがいる社会。本当にこのままでよいのでしょうか。

この状況を変えたい、子どもたちの体験格差をなくしたい。その思いで、CFCは新しく「子どもの体験奨学金事業」を立ち上げました。

実は、CFCではこれまで12年間、特に学習格差の解消を目的とした「スタディクーポン」事業を実施しながら、体験格差の解消に特化した事業の立ち上げを何度も多方面に提案してきました。

長年、提案は上手くいきませんでしたが、2020年に「みてね基金」さんから助成金をいただき、ようやく「体験格差」解消を目的としたトライアル事業を開始することができました。そして2年の試行錯誤を経て、今回、事業の本格実施に挑んでいます。

いつも私たちの教育格差をなくすための取り組みに共感してくださっている皆さま、そして初めて活動を知った!という皆さまにも、ぜひ私たちの新しい挑戦を応援していただけると嬉しいです。

【参考文献】
*1 池迫浩子, 宮本晃司(2015)ベネッセ教育総合研究所訳「家庭、学校、地域社会における社会情動的スキルの育成国際的エビデンスのまとめと日本の教育実践・研究に対する示唆」OECD Education Working Papers, No. 121, OECD Publishing.
*2 Durlak, J.A., R.P. Weissberg&M. Pachan(2010) “A meta-analysis of after-school programs that seek to promote personal and social skills in children and adolescents”, American Journal of Community Psychology, Vol.45,pp.294-309.
*3 Covay and Carbonaro(2010) “After the Bell: Participation in Extracurricular Activities, Classroom Behavior, and Academic Achievement”, Sociology of Education, Vol. 83/1, pp.20-45.
*4 文部科学省(2021) 「青少年の体験活動の推進に関する調査研究」
*5 Gordon, D, Adelman, L, Ashworth, K et al. (2000) Poverty and Social Exclusion in Britain. Research Report. Joseph Rowntree Foundation , York.
*6 文部科学省(2022)「令和3年度子供の学習費調査」

子どもの「体験格差」をなくすため、ご支援をお願いいたします!

CFCの調査では、低所得家庭の子どもの3人に1人が過去1年間、学校外での体験活動が何もなかったと回答しています。CFCでは、経済困窮家庭の小学生がスポーツや音楽、キャンプなどに参加できるよう、「子どもの体験奨学金」を提供しています。体験格差をなくすため、どうか皆さまのご支援をお願いいたします。

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