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【レポート】「体験格差」をテーマとした沖縄の「地域円卓会議」に代表の今井が出席しました!

こんにちは。広報担当の内藤です。11月14日に沖縄で開催された「地域円卓会議」に、CFC代表の今井が参加しました。

「子どもの体験保障」をテーマとした今回の円卓会議では、今井が論点提供者として、沖縄現地で活動する団体や記者など、子どもの体験に関わる様々な立場の方が着席者として座につきました。

さらに、修学旅行で現地を訪れていた関東学院高校の生徒の皆さんをはじめ、50名以上の方が参加して意見を交わし合いました。今回は当日の詳細をレポートします!

【地域円卓会議とは】
地域で起きている「困りごと」に関連するテーマについて、様々な形で関わっている複数のステークホルダー(市民、NPO、行政、企業など)が対話を通じて進めていく、公益財団法人みらいファンド沖縄が主催する場。会議は「論点提供者」による論題提供から始まり、着席者による視点提供、参加者を含めた全員参加型のサブセッション、解決に向けた方向性の検討(振り返り)の順で進行していきます。


公益財団法人未来ファンド沖縄の平良斗星さん(写真右)ファシリテートの元、会議が進行しました

CFC今井より論点提供

「子どもの体験格差実態調査」結果とハロカルの活動について

はじめに今井より、CFCの設立経緯や活動紹介を行ったのち、2022年に行った「子どもの『体験格差』実態調査」により明らかになった体験格差の実態や、体験格差の解消に向けて沖縄など4地域で開始した「子どもの体験奨学金事業ハロカル」の取り組みについて紹介しました。

調査の結果について、今井からは、家庭の経済状況により子どもの体験機会に格差が生じていることや、体験をあきらめる背景にさまざまな理由があることをお話ししました。

また、体験格差が親から子どもへ世代を超えて連鎖している可能性について触れ、会場の参加者に対し、「体験格差の世代間連鎖を断ち切るために、子どもの体験機会を地域主体で保障していく必要があるのではないか」と問いかけました。


CFC今井による論点提供

着席者による視点提供

沖縄という地域ならではの課題感と多様なアプローチ

論点提供に引き続き、沖縄で子どもの体験に関わる活動をされている団体の方をはじめとした「着席者」によるプレゼンテーションが行われました。

「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」代表の秋吉晴子さん

沖縄で19年以上ひとり親の支援活動をしている「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」代表の秋吉晴子さんは、2022年に実施したひとり親家庭への物価高の影響調査結果をふまえ「物価高による支出が増えたことで、多くのひとり親家庭が生活に必要な最低限の衣食住にも事欠く状況にある」とお話しされていました。

また、ひとり親家庭の子育てにおける困りごととして「『習い事をさせてあげられていない』という回答が4割以上にのぼった」と話し、「物価高騰で支出を削らないといけないとき、一番にしわ寄せが行くのが子どもの習い事。多くのお母さんたちが『やらせてあげたいけどできない』と感じている」と訴えました。


「オルタナティブスクール琉球学舎『こてらす』」を開校した翁長有希さん

今年4月に沖縄市コザの商店街の中に”体験ファースト”のフリースクール「オルタナティブスクール琉球学舎『こてらす』」を開校した翁長有希さんは、キャリア教育に携わる中で「生活の中で行うさまざまな社会体験が、子どもたちにとって横断的学びになっているとの確信を抱いた」とのこと。

翁長さんは「(こてらすに入学した)子どもたちには、商店街などの街全体が『学校』だと思わせている」と話していました。現在は2~5名の子どもたちが在籍しているそうですが、子どもたちは、実際に沖縄各地をバスで移動して自然体験をしてみたり、商店街でのお買い物などを通じて街の人たちと交流したりするなど、生活に密着したさまざまな「体験」から日々学びを得ているのだそうです。


「こてらす」に通う子どもたちの日々の体験の様子(翁長さん提供)


「公益財団法人みらいファンド沖縄」プログラムオフィサーの吉川牧子さん

オンラインイベントのプラットフォーム事業の立ち上げと運営を担う「みらいファンド沖縄」プログラムオフィサーの吉川牧子さんは、事業立ち上げ前の仮説として「もともと地理的制約により体験機会が少なかった離島に住む子どもたちが、コロナ禍によりますます体験機会を失ったのではないか」と考えていたとのことでした。

実際に事業を実施し、実は離島の子どもたちが「暇にしている」わけではなく、地域の行事の手伝いや学校の部活動の兼務などで、日常的に忙しくしていることもわかったそうです。一方で、こうした体験が必ずしも子どもの「やりたいこと」と一致しているのかは社会や周りの大人がくみ取る必要があるという話もしていただきました。


「株式会社琉球新報社」の高江洲洋子さん

沖縄の新聞社「琉球新報社」で福祉や子育て、教育、貧困問題などをテーマに取材されている高江洲洋子さんは、琉球新報社が行った部活動実態調査の結果をふまえながら、所得が低い家庭ほど子どもが部活動に参加しておらず、スマホ代や通学費などを支払うためのアルバイトに参加している割合が高いと話しました。

こうした現状に対し、高江洲さんは「子育て家庭の余力を生み出すため、医療費や通学に対する費用を補填するなど、政策として子どもに対する『補償』を充実させていく必要があるのではないか」とお話しされていました。

参加者全員によるグループワーク(感想共有・意見交換)

「ひとり一人が望む形で放課後や休日を過ごせるように」高校生の声

ここまでの論点提供者・着席者の話をふまえ、3~5人程度のグループで感想共有や意見交換を行いました。今回は、関東学院高校の生徒の皆さんと一般参加の地元高校生や社会人の皆さん、今井や着席者のメンバーも加わり、短時間ではありながら白熱した議論や意見交換がされました。




サブセッションの様子

参加した高校生からの声

・これまでに様々な習い事をしてきたが、自分からではなく親から勧められてやってきたものが多かった。子ども自身が「やりたい」と思うことができていれば、より意欲的に取り組むことができて学習効率も上がっていたのではないかなと思うので、子どものやりたいことを尊重してくれる社会になると良いと思った。

・衣食住に困らずやりたいことをさせてもらってきた自分たちがいかに恵まれているかに気づいた。今日の場で、必ずしもすべての家庭で同じようにさせてもらえるわけではないと知ったが、そうした事情はなかなか表面化せずに気づきづらいものだからこそ、一人ひとりが目の前の人の気持ちや感情をくみ取る力が大事だと思った。

・体験格差の世代間連鎖の話のなかで、親がやらなかったことを自分の子にさせようと思わなかったり、させることに恐れを持ったりすることもあるだろうと思った。そう考えると、体験保障の意義は、子どもの将来の選択肢を増やすことや、物事の判断基準を持つことにつながるということだと思う。

・僕の友人で、やりたくない習い事をなかなか親にやめさせてもらえない経験をしている人がいた。体験を保障することが大切な一方で、子どもがやめたいと思ったときにやめられるようにすることもまた、大切なことだと思った。

全体の振り返り

子どもの権利である「体験」を社会みんなで支える

サブセッションが終了したのち、再び全員が席につき、議論の振り返りを行うとともに、子どもの体験が保障される世界を、どのようにして設計していくべきかを話し合いました。




会議の記録者を務めてくださった「ことばグラフィッカー」の室伏長子さんのグラフィックレコードとともに振り返りを行いました。

※以下、一部抜粋

【しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄 秋吉さん】
・子どもたちが個別に持つ可能性に着目し、家庭環境などの生まれに関係なく社会が見守ることが必要ではないか。子どもたちひとり一人の可能性を摘まずに、衣食住や体験に対して大人たちがサポートしていく意識を持つべきだ

【チャンス・フォー・チルドレン 今井】
・体験を中心とした学びを設計することで、子どもたちが持つ可能性を最大化することができるのではないかと、議論を通じて改めて感じた。体験保障の仕組みを作るうえでは、体験を『子どもの権利』としてとらえ、子どもひとり一人の声をくみ取りながら、『やってみたい』という思いを叶えられるような設計をしていくことが大切だ

・一方、先ほどのサブセッションでも挙がったような「やめたいのにやめさせてもえない」という状況もまた、子どもの権利を侵害している状態だと言える。体験保障と同時に、やってみて合わなかった時にやめられるなど、あくまでも子どもを中心に考えていくべきだ。

・今の日本社会では、子どもの体験は「贅沢なもの」と捉えられがちだが、子育て家庭の現状を見れば、体験は子どもにとって「必需品」ではないだろうか。衣食住にとどまらず、社会で保障すべきもののレベルを上げていく必要がある

【公益財団法人みらいファンド沖縄 平良斗星さん】
・今回の会議では「個別性」や「ひとり一人」というキーワードが多く挙がった。体験を保障していくうえでの重要なキーワードではないだろうか。

・家庭の経済的事情でやりたいことができない子どもたちがいることを「親の責任」ととらえるのではなく、「社会の責任」であるという認識に変えていく必要がある。

・体験保障を考えていくうえでは、今後、学力と体験の関係性を再設計していくこともできると良いのではないだろうか。今日この場にいる高校生の皆さんはぜひ、これからの社会を変える側に回ってほしい。







地域円卓会議に参加して(広報担当 内藤日香里)

子どもひとり一人の気持ちを尊重し、周りの大人が支えていく大切さ

今回、沖縄で子どもや家庭の支援を行っている方々や、「体験」にまつわる活動を行っている方々と議論させていただきましたが、沖縄という地域ならではの課題感や多様なアプローチがあることに気づかされました。

支援団体の立場にいる方やキャリア教育の領域で活動してきた方、記者の方など、出席した方々の立場はそれぞれに異なりますが、多くの方が共通して「子どもひとり一人の気持ちを尊重し、周りの大人が支えていく」ことが大切だとお話しされていたことが印象に残りました。

また円卓会議では、普段こうした場で接する機会の少ない高校生の皆さんともサブセッションの場でお話しできたことも非常に新鮮でした。限られた時間のなかではありましたが、高校生の皆さんが「体験格差」という問題や「体験保障」のあり方について、自分たちのいる環境やこれまでにしてきた体験などをふまえつつ、じっくりと考えながら議論に参加してくれたことが伝わってきましたし、彼らの意見や考えと触れたことで、私たち大人の側がハッとさせられたことも多かったと思います。



私たちCFCも、引き続き「ハロカル」を通じて、子どもたちひとり一人が持つ「やってみたい」気持ちを丁寧に汲み、その気持ちに応えられるようにしていきたいと思います。一方で、子どもたちの「やりたくない」という気持ちも同じく尊重する必要があります。あくまでもひとり一人が望む形で放課後や休日を過ごせるように、子どもを中心に据えた社会の設計をしていくことが不可欠だとの思いを新たにしました。

今回の円卓会議を主催・運営してくださった「公益財団法人みらいファンド沖縄」および「NPO法人まちなか研究所わくわく」の皆さま、この場にお招きいただきありがとうございました!また、当日の議論を共にさせていただいた着席者やご参加の皆さまにも、心よりお礼を申し上げます。

【CFCの活動をもっと知りたい方へ】

イベントの様子

毎月の活動説明会で、子どもの貧困・教育格差・体験格差の現状や、CFCの活動内容等について詳しくお伝えしています。

課題の現状や、CFCの活動をより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

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