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夏休みの教育格差ー海外での実態と対策

8月となり、子どもたちは夏休みをむかえています。

最近は「子どもの教育格差(体験格差)が開きやすいのは夏休み」と、よくメディアでも言われているものの、学術的な定量調査は国内で見当たらない状況です。

(代わりに、CFCが2023年に実施した通年の体験格差の実態調査がよく引用されています)

夏の休暇中に低所得家庭で教育資源が絶たれる

一方、海外では米国や英国などで複数の学術調査が行われています。

例えば、米国では夏休み中に生じる子どもたちの学力低下が数十年前から「サマースライド(Summer Slide)」と呼ばれて定着しています。

特に低所得家庭において、休校中に教育資源が断絶されることは「Faucet Theory(蛇口理論)」と名づけられており*1、例えば以下のような点が明らかにされています。

・夏の休暇中に、数学・国語の学力が低下する。特にミドルクラスの子どもは学力を伸ばすのに対し、低所得世帯の子どもは低下が深刻である。*2

・小学生の時に生じた差が、その後の学力や進学実績に影響を及ぼす。*3

各国での対策

こういった長期休暇によって発生する教育格差に対して、各国もそれぞれに手を打っている状況です。

特に個人的に驚いたのが、CFCの事業と非常によく似た仕組みを導入している英国の事例「Holiday Activities and Food Programme」です。

この制度では、経済困窮家庭の子どもたちに電子クーポンを給付し、子どもたちがクーポンを利用して、地域のNPO等が提供する食事支援や探求学習、アクティビティ(スポーツや文化活動等)を自由に選択して、参加できるようになっています。

日本でも、たとえばCFCが墨田区と連携している事業のほかに、足立区が公的施設を使って夏休み期間中に無料で体験プログラムを提供するなど、自治体での取り組みも少しずつ進んでいます。

引き続き、目の前の子どもたちにサポートを届けるとともに、国内外での情報収集や実態調査を行い、子どもたちにとってよりよい支援の仕組みになるよう活動の深化に努めてまいります。

【一人でも多くの子どもたちにクーポンを届けるため、ご協力をお願いします】

子どもの写真

私たちがクーポンを届けられる人数は、集められた寄付金額が元になって決まります。次回のクーポン提供に向け、すでに200名以上の子どもたちが支援を待っています。

一人でも多くの子どもたちに支援を届けるため、皆さまのご協力をお願いいたします。

>>支援方法の詳細を見る


*1 Entwisle, D. R. et al (2001) “Keep the faucet flowing: Summer learning and home environment”, American Educator, 25(3), 10-15.
*2 Cooper, H. et al (1996) “The effects of summer vacation on achievement test scores: A narrative and meta-analytic review”, Review of Educational Research, 66(3), 227–268.
*3 Alexander, K. L. et al (2007) ”Lasting consequences of the summer learning gap”, American Sociological Review, 72(2), 167–180.