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相対的貧困は何が問題か?

昨年、厚生労働省がまとめた国民生活基礎調査によると、2012年の日本の「子どもの貧困率」は16.3%。つまり、日本の子どもの6人に1人は貧困であることになります。しかし、皆さんは普段の生活の中で、これだけ多くの貧困の子どもたちを見かけることはあるでしょうか?おそらく、ほとんど「ない」のではないかと思います。これは、ここでの貧困の定義が「相対的貧困」を指しているためです。今回のコラムでは、改めてこの「相対的貧困」について考えたいと思います。

◆「相対的貧困」と「絶対的貧困」

「貧困」には二つの定義があります。一つは絶対的貧困。これは、生きるために最低限必要な衣食住が満ち足りていない状態を指します。途上国で飢餓に苦しんでいる子ども、海外のストリートチルドレン等がそれにあたります。

もう一つの定義が、相対的貧困です。これは、社会においてほとんどの人が享受できる「普通の生活」を得ることができない状態を指します。よって、相対的貧困は、その基準が「時代」や「国」等によって異なることが、大きな特徴です。先進国で「貧困」というと、後者の「相対的貧困」のことを指します。

この説明をすると、多くの人が「なるほど。相対的貧困は絶対的貧困よりもマシな状態なんですね」と言います。私たちは決してそうではないと考えています。「相対的貧困」は、ときに「絶対的貧困」と同じくらい大きなダメージを人に与えます。

◆「なんで、ぼくだけ?」

私たちが出会った、とある生活保護受給世帯の高校生のお話です。彼が小学校低学年の頃、クラスの友達と遊ぶ約束をするとき、「月曜日はスイミング、水曜日はお習字だから・・・」等といった具合に、みんなで予定を調整するそうです。そんな中、家庭の経済的な事情で習い事を何もしていない彼は、いつも「自分一人だけ」予定が真っ白だったそうです。「自分だけみんなと違う」ということは、彼にとって、とても辛い経験だったそうです。

生活保護受給世帯で育ち、今は奨学金を使って大学に通うある男の子は中学生時代の頃のことを振り返り、言います。「サッカー部で自分一人だけベンチコートを着れなかった。」彼一人だけ、学校のジャージで寒い冬を乗り越えたそうです。彼が辛かったのは「寒さ」だけではないのは、言うまでもありません。

◆相対的貧困が子どもの自己肯定感の低下に繋がる

「そんな小さなこと。」と思うかもしれません。でも、貧困世帯で育つ子どもたちは、育っていく中でこのような経験を何度も何度も繰り返し、心に傷を負います。そして、いずれ彼らは「どうせ、僕なんか」と、何も期待しなくなってしまいます。

途上国の孤児院を支援するNGOに勤務している知人は、日本の児童養護施設を訪ねた際、『同じ養護施設でも、日本の子ども達の方が精神的な落ち込みが大きい』という感想を持ったそうです。

もちろん途上国の絶対的貧困状態はとても辛い状態です。私たち日本人には想像すらできないかもしれません。しかしながら、「周りの人にとっては当たり前の生活が、自分だけ得ることができない」という相対的貧困状態は、子どもたちに強烈なダメージを与えています。もはやこれらは比べられる問題ではないのかもしれません。

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