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クーポン利用者募集から得た教訓

credit matsumoto

今年も、新たに東北でクーポン利用者の募集を行いました。被災家庭から送られてくる、大量の応募書類を眺めながら、2011年に初めて東北でクーポン利用者を募集したときの出来事を思い出しました。

初めてのクーポン利用者募集での出来事

2011年10月。クーポンの利用を希望する被災家庭からの電話が鳴りやまず、その対応に追われているときのことです。電話で、ある保護者から、厳しい口調で、当時のCFCのクーポンの応募制度や事務局員の対応の至らない点を指摘されたことがありました。

目の前の膨大な業務量に必死になる中、私は「せっかく、こんなに大変な中、『支援』をしようとしてるのに、なんでこの人はそんなことを言うんだ」という気持ちになり、私の口調も少し穏やかではなくなっていました。

でも、電話をきった瞬間、ハッとしました。ご家庭からの電話を受け続ける中で、知らず知らずのうちに、自分の中で「支援をする側」「支援を受ける側」という、ある種の上下関係のような感覚を持つようになってしまっていたことに気が付いたからです。

電話の相手の保護者の状況を想像すると、東日本大震災からまだ半年余りの状況で、本当に大変な中、得体の知れないCFCの事務局に電話をかけてきたに違いありません。自分の子どものために、電話をかけてきて、本当に子どもや家庭が求めていることを私に伝えただけに過ぎません。そんな相手の状況も想像できずに、落ち着いて対応できなかったこと、保護者の声にきちんと耳を傾けられなかったことに、強く反省しました。

[caption id="attachment_11919" align="alignleft" width="550"]応募書類

(画像)CFCには毎年1000人を超える子どもたちから支援を求める声が寄せられます。

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支援活動の難しさ

これは、社会的に弱い立場にある方をサポートすること(=いわゆる支援活動)の難しさ、そして恐ろしさを痛感した出来事です。でも、ボランティア活動やNPOのスタッフ等、(有給無給は問わず)社会的な活動を行う際、十分に意識しなければ、誰でも陥ってしまうことではないかと思います。

当たり前ですが、私たちの活動は、当事者の方々の声に耳を傾け、求めていることを知ることからスタートします。「自分たちは、きっと子どもたちにとっていいことをしているに違いない」という思い込みから、当事者である子どもたちやご家庭の声を受け止められなくなった時点で、活動の担い手としては失格ですし、活動は一切の価値を生み出さなくなります。さらには、子どもたちにとってマイナスの効果を生み出す危険性すらあります。

CFCの活動を続けるうえで、絶対に忘れてはならないこと

CFCの社外理事であり、また母体のブレーンヒューマニティー時代からご指導いただいているIIHOE代表者の川北秀人さんは、いつも次のようにおっしゃいます。

「可哀想な人を助けるのではなく、課題解決の担い手を増やせ」

子どもたちは、近い将来、私たちとともに、東北の復興や、日本の未来を担う存在へと成長していきます。クーポンを使う子どもたちと出会うたびに、私はその思いを強くしています。

「支援をする側」と「受ける側」を隔ててしまった時点で、支援の担い手を増やすことは絶対にできません。子どもたち・保護者と対等な立場で接し、当事者の声に耳を傾けること。そして、課題解決の担い手を増やしていくこと。これらは、CFCの活動を続けるうえで、私が大切にしていることであり、絶対に忘れてはならないことです。

【今年も1,479名(定員の7倍)の子どもから支援を求める声が寄せられました】

今年は震災から5年目となりましたが、今も多くの被災家庭は厳しい状況に置かれています。先日、今年度の教育クーポン利用者を募集したところ、定員220名に対し、1,479名もの子どもたちから申込みが寄せられました。クーポンを利用する子どもが夢に向かって進んでいる一方で、今も資金が追い付かず、全ての子どもたちに支援を届けることができていません。
一人でも多く支援を届けるために、皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。

30円子どもたちを支援する(細)