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学校外教育バウチャーとは

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今回のコラムでは、CFCが貧困の世代間連鎖を断ち切るための手段として、なぜ学校外教育バウチャー制度を採用しているのか、ということについてお話ししたいと思います。

そもそも「バウチャー」という言葉自体聞きなれない方が多いかと思いますが、日本語に訳すと「商品引換券、無料・割引券」となります。デパートの商品券や、コンビニの割引券(クーポン券)と言われるとイメージしやすいと思います。しかし、「学校外教育サービスに利用できる無料券」と言われてもピンとくる方は少ないかもしれません。

そこでまずは、「学校外教育」バウチャーについて話をする前に、混同しやすい教育バウチャー(=「学校教育」バウチャー)について触れておきたいと思います。

目的が異なる「学校教育」バウチャーと「学校教育」バウチャー

まず前提としてご理解いただきたいのは、「学校教育」バウチャーと「学校外教育」バウチャーとでは、名前は似ていますが、目的や性質は全く異なるという点です。

「学校教育」バウチャーの歴史は古く、今から50年以上も前の1950年代にミルトン・フリードマンというマクロ経済学者によって提唱されました。私立学校の学費など、学校教育に利用を限定したバウチャーを提供することで、家庭の学費負担を軽減するとともに、学校選択の幅を広げることで、学校間の競争により学校教育の質を引き上げることを目的とします。

これに対して「学校外教育」バウチャーとは、家庭の経済的な理由で学校外教育を受けられない子どもに対し、塾・予備校、習い事等に利用可能なバウチャーを提供することで学校外における教育機会の均等化を図ります。

つまり、学校教育の質の向上を主な目的とする「学校教育」バウチャーと、学校外教育機会の均等化を目的とする「学校外教育」バウチャーは、明らかに異なるものです。

学校外教育バウチャーのメリット

さて今一度、本コラムの主題に立ち戻ってみましょう。

なぜ、学校外教育バウチャーなのか?
現金を支給したほうが、自由に使えていいんじゃないの?
現金ではなくバウチャーを給付することで、手間がかかるのではないの?

このような疑問が皆さんにも沸いてくるのではないでしょうか。私たちがこの「学校外教育」バウチャー制度を採用するのは、以下に示すような重要な特長があるからです。

1.バウチャー給付だと使途を限定できる。

現金を給付した場合、教育以外の費用、生活費等に支出され、教育に使われない可能性があります。しかし、バウチャーで給付した場合、使途が学校外教育サービスに限定されるため、子どもたちに確実に教育の機会を提供することができます。

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▲バウチャーは確実に教育の目的で活用されます

2.子どもたちが受けたい学校外教育サービスを「選択」できる

バウチャーを利用する子どもたちは、自分の意思で受けたい学校外教育サービスを自由に「選択」することができます。そのため、サービスを受ける子どもたちの意欲が高まります。高い意欲をもって取り組むことで、高い教育効果を期待することができます。

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▲CFCのバウチャーは、3031ヶ所(2014/12/11時点)で利用可能です

3.地域の教育産業への経済効果が期待できる

バウチャーを受け取った教育事業者は収入を得ることができるため、地域の教育産業への経済効果が期待できます。特に被災地でバウチャーが利用された場合、被災した教育事業者の自立を支え、雇用を生みだすことに繋がります。

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▲学校外教育バウチャーは地域の雇用を促進します

教育格差の是正のために学校外教育バウチャーを!

これまで、日本における「学校教育」の機会は、義務教育によってすべての子どもたちに保障されてきました。しかし、「学校外教育」を保障する制度はこれまで十分ではありませんでした。

これまで手薄だった「学校外教育」の機会を保障することで、日本の子どもの教育格差を是正し、またその先にある負のスパイラル(貧困の連鎖)を断ち切ることができます。そして、「学校外教育」バウチャー制度は、この目的を達成するにあたり、非常に有効な制度だと私たちは考えています。

2012年7月から日本の行政機関としては初めて大阪市が「学校外教育」バウチャー事業を開始しています。同事業はCFCと凸版印刷株式会社の共同事業体が運営事業者となり、事業の運営を行っています。私たちはこの新しい試みをきっかけとして日本中の各自治体に学校外教育バウチャーを拡げていき、すべての子どもたちが十分な学びの機会を得られる社会を作っていきたいと考えています。

【日本の教育格差の現状についてもっと知りたいあなたへ】

毎月の活動説明会で、子どもの貧困・教育格差の現状や、CFCの活動内容等について詳しくお伝えしています。

日本の教育格差の現状や、CFCの活動をより詳しく知りたい方は、ぜひご参加ください。

CFC活動説明会詳細

【参考】
斉藤泰雄(2007)「M・フリードマンの 「教育バウチャー論」 再考」、国立教育政策研究所紀要 第136集。